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朝からしとしとと降り続く雨。梅雨が明ける前にエントリーしたい曲があった。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調「雨の歌」。1878~79年、ブラームス46歳頃の作品で、ブラームスの歌曲「雨の歌」の一部分がこのヴァイオリン・ソナタに用いられた事から通称となった。
演奏はサルヴァトーレ・アッカルドのヴァイオリン、ブルーノ・カニーノによるピアノで。('97年12月録音、ローマにて収録、FONE輸入盤)

元々、ブラームス作品の中でこの曲の存在を知らず、アッカルドのヴァイオリンの演奏をイタリアのFONEというレーベルで聴いてみたいと思って購入しただけのアルバムだったのだが、第1番の1楽章冒頭のどこか慈しむような旋律がすっかり自分の心を捉えてしまった。ブラームスの室内楽曲にこんな素晴らしい曲があったなんて!

この曲が自分の心を捉えたのはアッカルドのヴァイオリンに拠る部分も大きかったと思う。この録音当時、アッカルドは56歳。ストラディヴァリウスを自在にドライブして深みのある音色を引き出せるのは、円熟の域に達したアッカルドならではだと思う。イタリア出身だけに、旋律の歌わせ方がうまい。伴奏のブルーノ・カニーノも同じイタリア出身の名ピアニストで好サポートを繰り広げている。この作品がきっかけでアッカルドの演奏に興味を持つようになった。

カップリングは同2番と3番その他を収録。ちなみに第3番も素晴らしい。ブラームス作品には例えピアノ・ソナタであろうと、交響曲であろうと、曲構成に統一感があり、シンフォニックな響きが感じられる。仮にこの曲をブラームス自身が交響曲に編曲したとしても立派な作品として成立したと思う。
ちなみに、N響アワーの司会でお馴染み池辺晋一郎氏は著書の中で「雨の歌」を“史上最高の旋律”として絶賛している。ブラームスはどんな雨を眺めてこの旋律をインスピレーションしたのだろうか。

余談だが、この曲にはヨー・ヨー・マがエマニュエル・アックスと組んだチェロによる編曲版も存在する(SONY)。ヨー・ヨー・マ自身、よっぽどこの曲を気に入っていたのだろう。チェリストにもあこがれられるヴァイオリン曲があるなんて、ブラームスは幸せ者だ(^^)