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実演を聴いて忘れられない曲に出遭う経験は誰にでもあると思う。レコード(CD)はそこでの感動を追体験できる良さがある。自分にも最近そういう経験があった。「グスタフ・レオンハルトのクープラン」の項でブログした、昨年のクリスマスシーズンに職場の方が教会でのコンサートに出演したチェンバロ演奏だ。演奏曲はやはりクープランのクラブサン曲集第18組曲より「修道尼モニク」。なんか難しそうなタイトルだが、曲そのものを知らないからこそ、じっくりと今、目の前で演奏されるその曲に耳を傾けられた。

ゆったりとしたテンポ。何度となく繰り返されるシンプルなメロディー。教会の中で響くチェンバロの繊細な音。何かを感じながら音を紡ぎ出す演奏者の表情。その演奏が自分の心にすっと染み入ってきた。当日の数あるプログラムの中ではわずかな演奏時間だったのかもしれないが、そういう曲がその日の中で一番印象に残っていた、という事ってあるものだ。

幸運にも演奏にあたって参考にされたというCDを演奏したご本人からお借りする事が出来た。ブリリアントから格安で発売されているクープランのBOXセット。演奏者はMichael Borgstedeというチェンバロ奏者で、05年の録音という位の情報しかない。

その日の記憶がまたCDによって蘇った。いや、その日の印象とその後の自分の生活体験とが合わさって、また新たな感動となって蘇った、という方が正しいだろう。

その音楽は自分の今の心境にも近いようにも感じた。言葉にはいい表せなくても、音楽を聴いたときに、ああ、これが今の自分の気持ちだ、という経験っていうものもあると思う。クラシック音楽には、時代を大きく超えても、癒しと感動をあたえてくれる何かがあるのだろう。それが、クラシックを聴き続ける理由の一つなのかもしれない。