ヴォルフガング・サヴァリッシュと同じく、この2月にもう一人、自分にとって想い出のある指揮者が亡くなった。ジェームズ・デプリースト。東京都交響楽団の常任指揮者(2005~2008年)として、また、名作「のだめカンタービレ」のモデルにもなったマエストロとしてもお馴染みの指揮者だった。享年76歳。
デプリーストには2006年と2010年に過去2回、実演に接している。最初はのだめフィーバーにも沸いていた2006年、彼が都響の常任指揮者に就任した翌年の定期演奏会。サントリーホールで聴いたモーツァルトの交響曲第29番とブルックナーの交響曲第2番というプログラムだったが、当時既に両者の信頼関係の深さを窺わせる演奏だった。デプリーストはフィラデルフィア出身の米国人だが、数少ない黒人指揮者でもあった。また、ポリオの後遺症で、電動車椅子に座っての指揮という点でも、様々なハンディキャップがあったに違いない。
今回、デプリーストへの追悼として、過去にもエントリーしたマーラーの交響曲第5番とラフマニノフの交響曲第2番、バーンスタインの「ウェスト・サイド・ストーリー~シンフォニックダンス」(ジャケット画像:上段左と右)を改めて聴き直した。
マーラーの5番は、2005年4月にロンドンデビューを飾ったロンドン響との初共演盤という話題性もさることながら、やはり2年半前に他界した伝説のトランペット奏者、モーリス・マーフィーの輝かしいソロが聴ける点でも貴重なアルバム(2005年録音、NAXOS海外盤)。一方、ラフマニノフ(1994年録音)とバーンスタイン(2004年録音)がカップリングされた都響との共演によるアルバム(fontec国内盤)は、都響の弦と管が、日本のオケを代表するレベルにある事を印象付ける。
これらのアルバムがきっかけで、デプリーストの指揮した他のオケとの音源も聴くようになった。所有する音源の中では、1993~1994年まで首席客演指揮者を務めていたフィンランドのヘルシンキ・フィルを振ったショスタコーヴィチの交響曲第5番「革命」のアルバム(1992年録音、ONDINE海外盤)や、オレゴン交響楽団を振ったレスピーギの「ローマ三部作」のアルバム(祭り:1987年録音、噴水・松:2001年録音、DELOS海外盤)がお勧め。(ジャケット画像:下段左と右)
特に1980~2003年までの長きに渡り、音楽監督を務めた米国西海岸に位置するオレゴン交響楽団とのレスピーギのローマ三部作は、彼が同オケを米国トップレベルのオケの一つに育てたオーケストラビルダーとしての手腕の確かさを示しているし、オレゴン響のサウンドカラーにも良く合っている。
これまで本ブログにエントリーした関連リンクを記すと共に、心からご冥福をお祈りしたい。
■「のだめカンタービレ」陰の立役者~ジェームス・デプリーストのマーラー交響曲第5番
■デプリースト&東京都交響楽団LIVE!~「ウェスト・サイド・ストーリー」よりシンフォニック・ダンス
■ブルックナー:交響曲第7番~ジェームズ・デプリースト&東京都交響楽団公演(12月16日東京文化会館)