レナード・バーンスタイン(1918-1990)が亡くなって20年近くが経ようとする今も、最近、様々なライヴ映像がリリースされている。以前もこのブログでシューベルトのライヴ映像を取り上げたばかりだが、最近、バーンスタインが1976年にロンドンのプロムス公演で降った貴重な映像を観た(ユニテル・クラシカ、輸入盤)。会場は自分自身、1997年のプロムス公演で足繁く通ったロイヤル・アルバール・ホールだけに、懐かしさがこみ上げてくる。
何と言っても嬉しいのは、バーンスタインの十八番もののガーシュウィンが2曲収録されていること。そして、共演が彼と一時代を築き上げたニューヨーク・フィルであること。1960年代(1958~1969)を中心とした黄金期を経て、フリー時代に入ってからのニューヨーク・フィルとの相性は?バーンスタインがどのような弾き振りをするのか?・・・などなど、興味はつきない。1970年代のバーンスタインの息づかいを知る貴重なドキュメントにもなった。収録時は58歳。まだまだ若さを感じさせるバーンスタインは、ロンドンっ子にも指揮界のスター的存在だったに違いなく、風貌もかっこよかった(^^)以下、演奏の印象を綴ってみたい。
○ガーシュウィン:
・パリのアメリカ人
・ラプソディ・イン・ブルー
レナードバーンスタイン(指揮&ピアノ) ニューヨーク・フィルハーモニック
(1976年6月3、4日、ロイヤル・アルバート・ホールにて収録)
○パリのアメリカ人
ガーシュウィンが30歳の頃に初演された「パリのアメリカ人」は自分自身、社会人になって高校OB吹奏楽団の定期演奏会出演の際に演奏した懐かしの曲。ガーシュウィンだけに、指揮台を飛び跳ねるバーンスタインの指揮姿をイメージしていたのだが、以外にも真顔(^^) その後に演奏された(?)「ラプソディー・イン・ブルー」での弾き振りを控えての緊張感か?
しかしながら演奏は、ニューヨーク・フィルと長年の相性の良さを感じさせ、バーンスタイン特有の粘り気のある指揮にも柔軟性をもって見事に応えていた。
もう一つ、ここで貴重なのは、1985年よりシアトル交響楽団の音楽監督を務める指揮者のジェラード・シュワルツ(b.1947)がまだニューヨーク・フィルの首席トランペット奏者だった時代の演奏姿が見られること(画像:真ん中の奏者)。当時まだ29歳という若手奏者ながら、中間部のトランペット・ソロを任されるなど、早くもプリンシパルの座を射止めていた事が窺える。そんな若手奏者に期待しての意味もあるのだろう、終演後の聴衆の拍手に応じて、バーンスタインが彼を立たせていたのが微笑ましかった。バーンスタインの血が、現在指揮者として活躍するシュワルツの中でも、どこかで流れているのかもしれない。
○ラプソディ・イン・ブルー
バーンスタインの弾き振りが見られる貴重な映像。アメリカのボールドウィン・ピアノを使用しているあたり、バーンスタインのこだわりを感じさせる(画像:下)。音色的には多少ホンキー・トンクな傾向が感じられるが、その辺りもガーシュウィンを演奏するにあたっての狙いなのかもしれない。むしろ、ガーシュウィンのようなジャズ系の作品には相性がよさそうなピアノだ。
冒頭のクラリネットのソロが巧い。さすが、ジャズの国アメリカならではのプレイ。ここでのトランペット・セクションは先程のシュワルツは出ていないものの、年配の3人の奏者が輝かしいニューヨーク・フィル特有のブラス・サウンドを聴かせてくれる。
思わず笑ってしまったのはホール照明の演出。ピアノ・ソロになるとバーンスタインのピアノだけにスポットが当たるようになっており、そんな演出がムーディーでニクい(^^) 多少のミスタッチも散見されるが、そこは弾き振りだけにご愛敬。ニューヨーク・フィルの見事なサポートによって熱い演奏となっている。終演後はロンドンっ子からブラボーも聞こえてくる。
バーンスタインのラプソディ・イン・ブルーは、1982年に、ロサンゼルス・フィルとの共演でも弾き振りを披露。ドイツ・グラモフォンによってライヴ収録され、今日に至るまで歴史に残る名盤の一つとなっている。