2018年、英国を賑わせたニュースの一つに5月19日にイギリス王室、ヘンリー王子(33歳)のロイヤル・ウェディングがあった。女優としても活躍していたメーガン・マークル(36歳)との結婚。そんなロイヤル・ウェディングに沸き立つロンドンっ子の映像がテレビでも報道されていたのは記憶に新しい。そんな中、ひときわ印象に残ったシーンがあった。それは会場となるイギリス王室のウィンザー城にあるセント・ジョージ礼拝堂でゴスペルクワイアによって歌われた「スタンド・バイ・ミー」。挙式ではイギリス王室に縁のある曲が奏でられることの多いロイヤル・ウェディングで、アメリカのソウル歌手、ベン・E・キング(1938-2015))の名曲が奏でられたことへの驚きと共に、ゴスペルクワイアによる演奏の素晴らしさに感動し、思わずテレビに見入ってしまった。映像はYou Tubeでも見れるので、ここにもあげておきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=2O8H2UBthOI
彼らの演奏を音源としてもじっくり聴きたく、挙式を完全収録したオフィシャルアルバム(DECCA海外盤)を購入。実況録音盤だが、演奏曲は全てチャプターで頭出しができるのが嬉しい。ここで「スタンド・バイ・ミー」を演奏しているのは英国で20年以上活動しているゴスペルグループ、「ザ・キングダム・クワイア」(The Kingdom Choir)。ピアノの伴奏に乗り、男性ボーカルとコーラスで掛け合う形をとる。大聖堂のような礼拝堂のふくよかな響きに「スタンド・バイ・ミー」(Stand By Me)が優しく鳴り響き渡る。ヘンリー王子とメーガン・マークルにとっては至福のひとときだったに違いない。
映像を見ると、ザ・キングダム・クワイアの創設者でもあるカレン・ギブソンの指揮の力強さにソウルなものを感じる。アフリカ系アメリカ人であるメーガンにとって、今や世界中で愛されるポピュラーソングとなったアメリカ発の「スタンド・バイ・ミー」が挙式で歌われたのは、ある意味自然だったのかもしれない。厳かなロイヤル・ウェディングの中にあっても、音楽は国境を超えることを彼らが示してくれたといってもよいだろう。ある意味、ロイヤル・ウェディングの伝統を変えたともいえる彼らの選択に賞賛を送りたい。
なお、挙式ではザ・キングダム・クワイアが他にもう一曲「アーメン、私の小さな光」(Amen,This Little Light Of Mine」が歌われており、実況録音盤にも収録されているが、指パッチンのリズム乗せて女性、男性の順にソロの掛け合いが始まる展開はこれぞゴスペルの真骨頂!どこか、映画「天使にラブソングを」を想起させるハッピーな曲で、この曲も今回のロイヤル・ウェディングの締めくくりに相応しいと感じた。自分自身、学生時代に合唱団で数多くのスピリチュアルズを歌ったのが懐かしい。
そんなロイヤル・ウェディングを記念して、こだクラで所有する他の「スタンド・バイ・ミー」の音源も紹介しておきたい。まずは敬愛する山下達郎が歌う「スタンド・バイ・ミー」一人多重アカペラ版(アルバム「オン・ザ・ストリート・コーナー3」)に収録(下の画像、ジャケット画像左)。中間部のストリングスの旋律まで一人多重で作りこんでしまうという、彼にしかなし得ないであろうコーラスワークに圧倒される。そして、ベン・E・キングが歌うオリジナルは、山下達郎が監修し、8月にリリースされたドゥー・ワップ・アルバム「that's my desire~DOO WOP NUGGETS」(ワーナー・ミュージック国内盤)にも収録(ジャケット画像:右)されている。どんなに苦しくても前を向こうという気持ちにさせてくれるポジティブさと愛の詰まったソウルフルな原曲は、時を経ても古びない普遍性がある。日本だと「上を向いて歩こう」のような位置づけの曲だが、調べると、共に1961年の発表曲!偶然とは思うが、双方でこんな巡り合わせがあったことにも驚かされた。