かつて、ユーフォニアムというと、どことなくスポットがあたりづらい楽器のイメージがあったが、昨今ではユーフォニアムを取り上げたアニメ「響け!ユーフォニアム」が放送されたり、ユーフォニアムのスタープレーヤーが現れたりと、脚光を浴びつつある。そんな中、フィリップ・スパークが2012年にユーフォニアムの新たなる名作を生み出していた。曲はユーフォニアム協奏曲第3番「ダイヤモンド・コンチェルト」。「ダイアモンド」というインパクトのあるサブタイトルは、委嘱した吹奏楽団の地元の宝飾産業に由来しているという。全3楽章からなるが、聴き所は第3楽章。ドラムのリズムに乗り、ジャズバンドに変身したかのような、実にノリの良い楽章で、思わず体がスウィングしてしまう心地よさがある。単にブラスのカテゴリーで括るにはあまりにももったいなく、もっと世の中に知られてもよい名曲だと思う。この曲にはオリジナルの吹奏楽版と作曲者本人によるブラスバンド版への編曲版が存在するが、こだクラでは各々の版の印象を綴ってみたい。
スパークのユーフォアム作品には既に「パントマイム」(1986年作)という名曲もあるが、本作品は、そんな「パントマイム」でのソリスティックな妙技と「ウィークエンド・イン・ニューヨーク」(2008年作)で聴かれるジャズライクさを融合させたような作風だ。
■ユーフォニアム・ソロ:外囿祥一郎
フィリップ・スパーク指揮 シエナ・ウィンド・オーケストラ
(2014年1月11日録音、文京シビックホールにて収録、avex国内盤、ジャケット画像:左)
日本が生んだ名プレーヤー、外囿祥一郎氏によるソロ(画像:下段左)。以前もエントリーした、スパーク本人がタクトをとったライブ盤アルバム「スパーク!スパーク!!スパーク!!!」に収録。
作曲者本人の指揮ならではタクトさばきも活きているが、何より素晴らしいのは外囿祥一郎氏の、そのふくよかな音とジャズセンスに溢れたソロ・パフォーマンス。抜け感と中低音ながらではぬくもりのある音が、聴いていて実に心地よい。
■ユーフォニアム・ソロ:マシュー・ホワイト
フィリップ・ハーパー指揮 コーリー・バンド
(2013年頃録音、ANGLO RECORDS海外盤、ジャケット画像:右)
こちらはブラスバンド版による演奏。アルバム「PERIHERION」に収録。英国ウェールズの名門、コーリー・バンド所属のマシュー・ホワイトによるソロ(画像:下段右)。マシュー・ホワイトはこの曲の初演でソロをとったスティーヴン・ミードにも師事している。ここではユーフォニアムのソロと伴奏のブラスバンドが織り成す英国式金管バンドならではのハーモニーのマッチングが見事。ユーフォニアムのソロが全体のサウンドと調和することで、ソロの存在感がやや薄れる傾向もあるが、そこはコーリー・バンドによる切れ味のある伴奏がソロを際立たせる役割を担っており、全体としてマッシブな仕上がりになっている。
外囿の吹奏感のある吹奏楽版、コーリー・バンドによる切れ味のあるブラスバンド版、どちらも素晴らしい!
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