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2017年がスタート。新年最初のエントリーは昨秋にリリースされ、3年前の2013年に76歳で亡くなったデプリースト(1936-2013)が東京都交響楽団を振ったベートーヴェンの交響曲他のライヴ・アルバムを。
これまで、デプリーストと東京都交響楽団との共演アルバムといえば、本ブログでもバーンスタインの「ウェスト・サイド・ストーリーよりシンフォニック・ダンス」やラフマニノフの交響曲第2番をエントリーしていたが、ベートーヴェンやモーツァルトといったオーソドックスなレパートリーの音源はリリースされていなかった。自分自身、彼の実演には2度接しており、その中でモーツァルトやブルックナーの名演に接していただけに、今回、ベートーヴェンの音源がリリースされたことは彼のライフワークを辿る意味でもとても貴重なものとなった。録音年月は2005年から2008年までの常任指揮者以外の時期も含まれており、都響との相性の良さを窺わせる。
また、デプリーストといえば、当時、マンガやテレビ番組でも一世を風靡した「のだめカンタービレ」のモデル指揮者としても有名で、番組のテーマ曲ともいえる「交響曲第7番」が、彼自身のタクトで聴けるのも、のだめファンとしては嬉しいところ。アルバムは4枚組で収録は以下の通り。


①ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
②ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」、「プロメテウスの創造物」序曲
③ベートーヴェン:交響曲第7番
④ベートーヴェン:交響曲第8番
⑤ベートーヴェン:交響曲第9番、「コリオラン」序曲

ジェームズ・デプリースト指揮 東京都交響楽団
以下にて収録、東武レコーディングズ海外盤
①2005年11月19日サントリーホール、②2004年11月20日東京芸術劇場、③1997年3月20日東京文化会館、④2008年3月30日サントリーホール、⑤2006年12月26日サントリーホール


交響曲全集ではなく、定番の5番「運命」といった音源はないものの、彼のベートーヴェンを知るには充分だろう。全体を通した印象について綴っておくと、どの曲も素晴らしかった。熱しすぎることなく、冷静さを保ちつつ、実直なベートーヴェン像を描こうとしているデプリーストに対し、都響は彼のタクトにしっかりとついていく姿勢が窺え、指揮者・オケが一体となったベートーヴェンを創り出そうという姿に共感できた。
3番や7番など、指揮者によってはともするとオケをあおって暴走するテンポになりがちだが、デプリーストはそういうタイプとは違う。オケの手綱をしっかりと締めながらも、音楽の推進力と瑞々しさは失わず、シンフォニーとしてのベートーヴェン作品を楽しませてくれた。
もう一つ、印象に残ったのは都響のレベルの高さ。日本のオケのレベルの高さを世界に知らしめる意味でも、有効なアルバムといえるだろう。また、録音が優秀なのも嬉しい。これまで日本のオケによるベートーヴェンの音源は所有していなかったが、今回のアルバムは、今後の一つのスタンダードになり得ると感じた。他にも彼らのライヴ音源が残されていたら是非聴きたいものだ。

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