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ポップス分野での強さは英国編でエントリーした「ビートルズ・コネクション」で既に証明済のキングズ・シンガーズだが、EMIからRCAレーベルに移籍して以降の3枚のアルバムを締めくくりとしてエントリーしたい。(ジャケット画像:左上より時計回り)

①「Good Vibrations(グッド・ヴァイブレーションズ)」
 (1991年録音、ロンドンにて収録、RCA海外盤)


キングズ・シンガーズとしては新たな一歩を踏み出したといえるポップス路線のアルバム。個人的にも思い入れの深いアルバムで、ドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」は中学時代に見たトム・クルーズ主演の映画「7月4日に生まれて」(1989年公開)のサントラにも収められていた。英国ポップス・ロック界の大御所、フィル・コリンズ(b.1951)の「Father To Son」は、学生時代にシアトル郊外の街に約1か月ホームステイした折、お世話になったホストファミリーとの別れを惜しむ際に、空港に向かうバスの中で聴いて癒された曲だった。
また、ビリー・ジョエル(b.1949)の「And So It Goes」は合唱団がかつてアンコール曲として披露した曲として印象に残っている。この曲は、以前エントリーしたオランダの男声ヴォーカル・アンサンブル、「ジェンツ」のアルバムにも収められていたので、ビリーの名曲がア・カペラで幅広く受け入れられた曲といえるだろう。味わい深いリードボーカルを聴かせてくれるテノールのボブ・チルコットが印象に残る。

②「Circle of Life(サークル・オブ・ライフ)」
 (1996年6月録音、オランダにて収録、RCA国内盤)


アルバム・タイトル曲であるディズニー映画「ライオン・キング」(1994年公開)のテーマ曲、エルトン・ジョン(b.1947)の「サークル・オブ・ライフ」で、ついにキングズ・シンガーズがついにディズニーにも進出(?)と思わせられたアルバム。このアルバムから、カウンター・テナー及びバリトンに新規メンバーが加わっている。
ホイットニー・ヒューストン(b.1963)主演の映画「ボディガード」(1992年公開)の名曲、「I will always love you」、ベッド・ミドラー(b.1945)の心染み入る名曲「The rose」、①のアルバムにも収録され、キングズ・シンガーズではお馴染みのナンバーとなったフィル・コリンズのバラード・ナンバー「Groovy kind of love 」は出色の演奏。指揮を務めるのは、以前、アルバム「ア・ラ・フランセーズ」で共演したカール・デイヴィス。

③「Spirit Voices(スピリット・ヴォイシス)」
 (1997年録音、ニューヨークにて収録、RCA国内盤)


ポップス路線を更に深化させたクロスオーバーなアルバム。リズム体を伴った一曲目のビル・ウィーラン「Lift the Wings」からその世界に誘われる。この曲は全世界でヒットした「リヴァー・ダンス」からの曲。また、アルバム①の「Good Vibrations」で初カバーして以来のザ・ビーチボーイズの代表作も数曲取り上げており、山下達郎もアルバム「Big Wave(ビッグ・ウェイブ)」(1984年リリース)でカバーした「Please Let Me Wonder」は、何とビーチ・ボーイズのメンバーであるマイク・ラブ(b.1941)とブルース・ジョンストン(b.1942)がゲスト・ボーカルを務めた貴重な音源。リゾート気分を感じさせる「Kokomo(ココモ)」もいいが、終曲に収められた「The Lord's Prayer」はビーチ・ボーイズの元リーダー、ブライアン・ウィルソン(b.1942)が手掛けており、その絶妙なハーモニーはビーチ・ボーイズも顔負けだ。