先週、首都圏に初雪が舞い降りた。厳寒の冬をホットにさせてくれる曲として最近のヘビーローテーションとなっているのが、東海林修作曲の「ディスコ・キッド」という吹奏楽曲。元は1977年の全日本吹奏楽コンクールの課題曲という。ドラムあり、エレキベースあり、ソロあり、はたまた冒頭のイントロ部分で掛け声(!)まで登場するという、およそコンクールの課題曲とはかけ離れたイメージのポップス曲なのだが、タイトルからも窺える通り、聴き手を一気にフィーバーな気分にさせてくれる曲調で、寒さを吹き飛ばすにもぴったり。今回はいずれもライヴ収録で、且つアンコール曲として演奏された3つの音源を聴いて冬の寒さを乗り切ってみたい。まさにアンコールピースに打って付けの曲といえるだろう。(ジャケット画像:左上より時計回り)
■現田茂夫指揮 大阪市音楽団
(2011年6月10日録音、ザ・シンフォニー・ホールにて収録、フォンテック国内盤)
以前エントリーしたスパークの「陽はまた昇る」と同じ定期演奏会のライヴアルバム「大阪俗謡による幻想曲」に収録。今回取り上げた3枚の中では、自分にとってスタンダードとなる演奏。中間のソロはクラリネットのみで、特段のアレンジは加わっておらず、オリジナルに忠実な演奏と思われる。冒頭の掛け声は「ディスコ!」だが、震災年のコンサートだった事もあり、「ディスコ!」がなぜか「フッコー!(=復興!)」と聴こえるのは自分だけだろうか? 大阪市音楽団ならではの高い燃焼度と安定感を感じさせる。
■佐渡裕指揮 シエナ・ウィンド・オーケストラ
(2004年12月録音、りゅーとぴあコンサートホールにて収録、エイベックス・クラシックス国内盤)
今回エントリーした3枚の中でのマイベスト盤。アルバム「ブラスの祭典3」に収録。冒頭の掛け声は「フィーバー!」となっており、同じ掛け声入りの大阪市盤より、ボルテージの高さを感じるのが最初の聴き所。また、中間部はクラリネット→フルート→トロンボーン→クラリネットと4つのソロが登場する特別仕様となっている。何より佐渡&シエナ・ウィンド・オケのノリが最高に発揮されており、指揮者と演奏者双方の相性の良さを窺わせる。実演に接していたら、佐渡氏が指揮台を飛び跳ねるのが想像できそうな演奏だ。
■時任康文指揮 大江戸ウィンド・オーケストラ
(2002年10月録音、東京芸術劇場にて収録、IEJ国内盤)
初めて、この曲の存在に出会った音源。アルバム「アナザーオーソドキシー」に収録。大江戸ウィンド・オーケストラは、ジャズやポップス界のミュージシャンも含まれた特別編成の楽団だけに、サウンドはビッグバンド風で、ある意味、ディスコ・キッドに最も似合う団体といえるかもしれない。掛け声が入っていないのは意外だが、ここで聴かせてくれるソロは格別で、中間部のクラリネットはジャズテイストそのもの。何より最大の聴き所は、上記の2つの音源にはないパーカッション・セクションによるアドリブ付きという点。ドラムやコンガによるアドリブは納得できるのだが、アドリブのラストにティンパニがディスコ・キッドの旋律を叩いてしまうあたりは驚嘆(!)で、客席から拍手が沸き起こるのも無理もない。メンバー達のこの曲に対する愛着やこだわりと共に、新たな魅力を伝わってくる一枚。
実際、ディスコ・キッドは現在でも根強い人気があり、様々なヴァージョンが存在するようだ。一例として上記の順でディスコ・キッドを聴けば、ヴァリエーションが感じられ、ぐっと面白さが増しそうだ。