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天気がくずれ始め、ようやく夏もようやく終わりの兆しが見えてきた。今宵はロンドン交響楽団のクラリネットの元首席奏者、ジェルヴァース・ドゥ・ペイエが奏でるモーツァルトのクラリネット協奏曲の名演を。サポートするのはペーター・マーク指揮ロンドン交響楽団(1959年録音、キングスウェイホールにて収録、デッカ輸入盤)。

この演奏を一聴した時、自分にとってはプリンツのベーム&ウィーン・フィル盤を上回る名演かもしれない、と思った。ペイエの音色に惚れてしまった、といった方がいいだろうか。オーケストラをバックにして、クラリネットがこんなにふくよかに、優雅に鳴る楽器だったとは!

ペイエは1956年にロンドン交響楽団の首席クラリネット奏者に就任。この録音当時、まだ就任3年目という事になるが、実に落ち着きある吹きっぷり。クラリネット本来の木管楽器としての温かみと艶やかな響きに加え、都会的な洗練さも感じられる。

全体を通してプリンツ盤と比較すると、やや早めに感じるテンポ。ペーター・マーク(1919~2001)の指揮も好影響を与えているのだろう。ペーター・マークといえばモーツァルト解釈の名指揮者としても有名。数年前、客演していた東京都交響楽団とのモーツァルトの交響曲38番「プラハ」のライブ録音(1984年録音)がフォンテックからリリースされ、貴重なアーカイブとなっているのが記憶に新しい。ロンドン響もさすが同士の演奏とだけあって、見事な好サポートを繰り広げている。
このディスクをきっかけにジェルヴァース・ドゥ・ペイエの音色に一気に惹きこまれてしまった。

モーツァルトのクラリネット協奏曲を聴くと、今夏の暑い昼下がりの喫茶店で鳴っていたBGMを思い出す。そんな猛暑だった日々も、あともう少し・・・。