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2018年5月のヘンリー王子とメーガン・マークルのロイヤル・ウェディングで演奏され、オフィシャルアルバムに収録された演目の中で、前回エントリーしたゴスペルクワイアによる「スタンド・バイ・ミー」と共に、もう一つ印象的な曲があった。式典のエンディングの婚礼の行列でストリングスによって奏でられたその曲は、品格さと爽快さに満ち、一聴してすぐに気に入ってしまった。曲はウィリアム・ボイスの「交響曲第1番ニ長調」より「第1楽章」。なお、交響曲第1番には「New Year Ode」という副題が付けられている。ウィリアム・ボイス(1711-1779年)は英国出身の作曲家・オルガン奏者だ。

実際の様子はyou tube上で今も見ることができ、2時間4分当たりからその音楽は流れてくる。
https://youtu.be/N42MQJX4KoY

交響曲といっても一楽章あたりの演奏時間は短く、この1楽章はわずか2分半程度。ヘンデル(1685-1759)に似た作風で、ヘンデル好きな人なら、きっと親近感を覚えるだろう。実際、ウィリアム・ボイスはヘンデルとほぼ同じ時代を生きている作曲家でもある。ロイヤル・ウェディングで指揮をとったのはクリストファー・ウォーレン=グリーン(b.1955)。ヴァイオリニストでフィルハーモニア管弦楽団の元コンサートマスターでもある指揮者で、演奏は英国主要オケのメンバーによる特別編成オケ(BBCナショナル管弦楽団、イギリス室内管弦楽団、フィルハーモニア管弦楽団)から成る。ロイヤル・ウェディングを音楽で祝福する曲としてまさにぴったりだと感じた。そんなウィリアム・ボイスの交響曲の音源を今回エントリーしたい。

○ウィリアム・ボイス:交響曲第1~8番
 サー・ネヴィル・マリナー指揮 アカデミー室内管弦楽団
 (1993年2月、セント・ジュード、ロンドンにて収録、CAPRICCIO海外盤、ジャケット画像右上)


ここではウィリアム・ボイスの8つの交響曲全てが収録されているのが何より嬉しい。史料的な価値も高く、音源を残してくれたネヴィル・マリナー(1924-2016)の功績は大きい。聴いてみると1つの交響曲は全3楽章で構成され(第6番のみ全2楽章)、演奏時間は10分以内といずれも実に短い。また、基本的に弦楽合奏編成であるのも特徴。ある意味、小品を交響曲という形式でまとめたような作品だ。実際、どの楽章から聴いても、耳馴染みがよく、どこかヘンデルの「水上の音楽」のような雰囲気を持っている。

○ウィリアム・ボイス:交響曲第4番
 ロバート・ハイドン・クラーク指揮 コンソート・オブ・ロンドン
 (1988年頃録音、ヘンリー・ウッド・ホールにて収録、Collins海外盤、ジャケット画像下)


以前、ドメニコ・ツィポーリ(1688-1726)という作曲家の「チェロとオーボエのためのエレヴァツィオン」の音源でエントリーしたコンソート・オブ・ロンドンのバロック名曲集のアルバムに、ウィリアム・ボイスの「交響曲第4番」の音源が収録されていた!同じ交響曲をマリナー盤とクラーク盤の2つの音源で聴き比べできるのは興味深い。交響曲第4番においては、ロイヤル・ウェディングの華やかさに近い雰囲気を兼ね備えたクラーク盤の方が好みだ。

なお、you tubeで検索すると、このウィリアム・ボイスの交響曲はリコーダーやサックス、ブラスでも演奏されており、現代でも幅広く愛奏されていることが窺える。世間ではあまり知られていない作曲家だが、今回のロイヤル・ウェディングのオフィシャルアルバムを通じて、ウィリアム・ボイス作品、しいては英国音楽の魅力を再発見することができた。