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           (上がオーマンディ盤、下がヘルシンキ男声合唱団盤)
「フィンランディア賛歌」。シベリウスの1899年の作品である交響詩「フィンランディア」から生まれたこの賛歌に男声合唱版が存在する事は高校時代に購入したCDを通じて知っていた。フィンランドの第2の国歌とも言えるこの曲の実演に初めて接したのは大学2年の頃、シベリウスの祖国フィンランドのヘルシンキ男声合唱団の来日公演だった。当時男声合唱をやっていた自分にとって、外国の男声合唱団を聴くのは初めての経験。背丈も体格も日本人より大きいフィンランドの男性から発せられる声はさぞかしパワフルで、ごつごつしているだろうというイメージを持っていた。
一聴してその先入観は一転、クリアで無色透明な響きに驚かされたのを憶えている。「フィンランディア賛歌」の他に、クーラやマデトヤというフィンランドを代表する作曲家の作品が演奏された。
アンコールで、60人を超える団員がステージを降りて客席を360度に取り囲み、曲を披露してくれた時の感動も忘れられない。彼らの聴衆への感謝の表れだったのだろうか。場内が心温まる空気に満たされた。
その公演の際、ロビーで記念に購入したディスク('82~'90年録音、ジャーマン教会、ヘルシンキにて録音、FINLANDIA輸入盤)にその「フィンランディア賛歌」も収められている。録音が良い事もあり、今聴いても当時の感動がそのままよみがえってくる。

そんな「フィンランディア賛歌」の合唱のエッセンスをユージン・オーマンディは交響詩に取り入れようという企みが元々あったのだろうか、RCA時代に録音した交響詩「フィンランディア」は合唱付きとなっている('72年3月23日録音、スコティッシュ・ライト・カテドラル、フィラデルフィアにて録音、RCA国内盤)。
合唱はフィラデルフィア管弦楽団合唱団(合唱指揮:ロバート・ペイジ)。マシューズ編による英語歌詞となっている。
シベリウスの良き解釈者と言われていたオーマンディ。彼にとってはフィンランディア賛歌を交響詩「フィンランディア」の中で華々しく謳いあげたかったのだろう。実際、合唱が登場してくるのは後半のシーンからなので、違和感なくオケにうまく溶け込んでいる。
合唱を取り込んで圧倒的な迫力でクライマックスを迎える展開手法、何となくチャイコフスキーの大序曲「1812年」とも似ている。そういえば、RCA時代に残したオーマンディの「1812年」も確か合唱付だったっけ・・・。 RCA側としても付加価値が付くのでプロモーション的にも有効だったに違いない。

なお、このオーマンディの交響詩「フィンランディア」が収められているディスク、元々メインのアンタル・ドラティ指揮のストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団による「交響曲第2番」('67年10月16~20日録音、コンセルトフス、ストックホルムにて収録、同上)を聴くべく購入したものだった。タワーレコードのクラシック売り場に入店してすぐ、4楽章の燃えたぎるような熱い演奏がBGMで展開されていたのがドラティ盤で、よくある“BGMの衝動買い”だった。最後のコーダのストックホルム・フィル金管セクションの雄叫びはまるでマーラーの「巨人」や「第5番」を思わせる。
このドラティ盤のCD化は世界初という。タワーレコードが企画・販売を担当して過去のRCA盤を復刻してくれるのも有難く、今後も是非このような隠れた名盤の復刻を望みたい。


《参照マイブログ》
春の訪れを感じるマイフェイバリットシングス特集③~北欧の春?シベリウスの魅力~
シベリウス:交響曲第2番、カレリア組曲、交響詩「フィンランディア」
サー・アレキサンダー・ギブソン指揮 
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団