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昨年2017年5月に聴いた「フィルハーモニア・ブラス・アンサンブル」の来日公演はフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルのアンソロジーとして感動を与えてくれたが、フィリップ・ジョーンズの作品とチェコを結びつける意外(?)なアルバムをエントリーしたい。
それは当時のチェコ・フィルの首席トランペット奏者、ミロスラフ・ケイマル(b.1941))をはじめとして、プラハに拠点を置く3つのオケ(チェコ・フィル、プラハ放送交響楽団、プラハ国立歌劇場管弦楽団)のメンバー11名から成る「チェコ・ブラス・アンサンブル」という団体のアルバム(「Brass Music」)というもの。全13曲中、9曲をフィリップ・ジョーンズと縁のある作曲者やアレンジの曲で占めている。収録曲は以下の通り。


○クリス・ヘイゼル:クラーケン
○ユリウス・フチーク:小言の多い老人
○クリス・へーゼル:3匹の猫
○ユリウス・フチーク:マリナレッラ
○スコット・ジョプリン:イージー・ウィナーズ
○ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」序曲
○ラヴェル:ボレロ
○ジム・パーカー:ニューヨークのロンドン子

チェコ・ブラス・アンサンブル
(1994年3月録音、チェコ放送スタジオで収録、MUSICVARS海外盤)


最大の注目は、お気に入りのジム・パーカーの「ニューヨークのロンドンっ子」が収録されている点。これまで、「ニューヨークのロンドンっ子」といえば、本家フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルの音源以外には過去に京都市交響楽団ブラス・アンサンブルのものしか、こだクラでは所有していなかったが、チェコのブラス団体にとっても、愛奏レパートリーになっており、音源が存在していたのは嬉しい限り。京響ブラスは全5曲の収録だったが、チェコ・ブラス・アンサンブル版は4曲(「ハーレム」、「クライスラービル」、「セントラル・パーク」、「ラジオ・シティ」)となっている。

演奏はフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルとはまた異なるサウンドカラーである点もユニーク。チェコのオケのブラスらしい、艶やかさと、瑞々しさが両立したサウンドだ。一言でいうと、とても美音で聴いていてゴージャス感がある。ケイマルの音も含まれるから、ある意味納得がいくというもの。

上述のフィルハーモニア・ブラス・アンサンブルでも実演をきかせてくれたクリス・ヘイゼルの「3匹の猫」も良い。
特に「ミスター・ジャムス」でフリューゲル・ホルンのソロを奏でるケイマルの音がとてもはまり役で、ムードたっぷり。こういったバラード的なソロも得意な彼にとっては、お気に入りだったに違いない。まさにケイマル流が窺えるアルバムで存分に楽しめた。

ジャケットの巻末にはメンバーのポートレイトが写っているのも嬉しい。本アルバムはチェコ地元レーベルの音源だけに、希少価値が高いといえるだろう。

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