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だいぶ以前から流れていたようだが、コンタクトレンズでお馴染みのボシュロムのCMに、バッハの曲が使われている。出演者は既に何代も替っていて、現在は女優の小雪が出演しているのが最新版のようだ。このCM、深夜に流れているのを見ると、ほっとするものがある。素朴ながらも、どことなく漂う品のよさ。やはりバッハの音楽が使われている効果というのは大きいと思う。使用曲は、ブランデンブルク協奏曲の第5番。フルートとヴァイオリンとチェンバロのための協奏曲ともいうべく、3台の独奏楽器が技巧的に活躍する曲でもある。
CMではその3楽章のジーグ風フーガの冒頭部分が、ヴァイオリンの代わりにファゴット、チェンバロの代わりにコントラバス、という編成でアレンジされているが、それがより素朴さを引き立たせているように感じる。
最近はCMがきっかけでついつい聴きたくなるクラシック曲も多い。さて、この3楽章のマイベスト盤は?・・・と思い立ち、数種類のブランデンブルク協奏曲の中からピッタリくるものを探してみた(^^)

○バッハ:ブランデンブルク協奏曲第5番
 ネヴィル・マリナー指揮 アカデミー室内管弦楽団
 ('80年5月録音、セント・ジョンズ・スミス・スクエア、ロンドンにて収録、フィリップス国内盤)


フルートにはジャン=ピエール・ランパル(1922-2000)、ヴァイオリンにはヘンリク・シェリング(1918-1988)チェンバロにジョージ・マルコム(1917-1997)を配した豪華ソリスト陣営。いずれもアカデミー室内管の固定メンバーではなく、このレコーディングのための共演メンバーだけに、当時のフィリップス・レーベルの力の入れようも感じられる。(ランパルは当時エラート・レーベルの専属だった)

始め、ソリスト陣の名前を気にせず、数種類のディスクを聴き比べしていたが、まず、フルートの音色に聴き惚れてしまったのが、このマリナー盤だった。ランパルのふわっと包み込むような音色は実に爽やかですがすがしい!
ヴァイオリンとの掛け合いではあるものの、フルート・ソロの方がより耳に残る曲でもある。そんなランパルの音色に、シェリングの誠実でまっすぐなヴァイオリンが絶妙に溶け合い、実に品のある音になっている。フルートとヴァイオリンを支えるマルコムのチェンバロ(1楽章後半の長大なカデンツァは最高!)も、あまりオンマイク気味にならず収録されているので、バランスがよい。
教会での収録である事で、残響のふくよかさをうまく捉えたフィリップス・レーベルの特長もよく出ている。

昨年、実演で聴いたコンサートの記憶も新しい(チェンバロ・パートはイェルク・デームスがピアノで担当)。なお、以前エントリーしたロンドン・コンコルド・アンサンブルの名盤でもチェンバロをピアノで置き換えている。

最近はバッハを歌うだけでなく、聴く機会も多くなってきた。今のせわしない世の中に、一つの安らぎ与えてくれる、バッハは時代に適合した最高のヒーリング音楽なのかもしれない。