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一聴してこれだ!と思った。クーべリック指揮、バイエルン放送交響楽団によるブルックナーの交響曲第6番。とかく1楽章の曲想に個人的には野蛮なイメージがあり、且つブラスセクションが騒ぎ立てるかのような大げさな印象をこれまで抱いていたが、クーべリック盤を聴いて、それがものの見事に覆された。これぞブルックナー・トーン!ブルックナー自身が教会のオルガニストであったように、まさに教会で鳴っているかの如くすみずみまで行き渡った響きだ。無理もない、録音会場はバイエルン放送響の本拠地であるミュンヘンのヘラクレスザール。大理石で固められた造りにも見えるこのホールのトーンの最上の部分がよく出ているような気がする。このCDを聴く限り、ホールのS席に座っているような感覚、とさえいえるだろう。

ちなみにこの名も聞かないマイナーレーベルでのCDだったので、ちゃんとした録音かどうか聴くまでは心配だったが、それは取り越し苦労だったようだ。残念なのは録音年やライナーノーツの記載がない事だが、最近同曲を指揮するクーべリックのDVDが発売されており、それによるとDVDとは別収録のようだ。DVDの録音年は1976年なので、その前後の収録であると思われる。嬉しいのはDVDはモノラル録音なのだが、このCDはステレオ収録になっており、より感動を増してくれている。

バイエルン放送交響楽団の音がまた素晴らしい。重々しくならず、ブルックナーの描く深い森を描き上げるストリングセクション。その森に光を当て、個々の木々の緑を輝かせるかのようなブラスセクション。ブルックナーに不可欠な自然の光景がそこにはある。
2年前(2005年)に横浜みなとみらいホールでマリス・ヤンソンス指揮によるバイエルン放送響の実演に接した時はああ、これがドイツの響きだ、と日本に居ながら感動したものだ。

ブルックナーといえばどうしても第4番の「ロマンティック」や第7番あたりに耳が行きがちだが、クーべリックの第6番を聴いたおかげで、自分にとってはそれらに充分匹敵しうる名曲となった。
クーベリックは自分が中学1年生の頃に購入したマーラーの交響曲第1番「巨人」を聴いて以来聴き続けている指揮者だから、クーベリック歴はもうかれこれ20年になる。まさに敬愛なるクーべリック・・・だ。