今回のスピーカー購入を機に、演奏だけでなく、これまで幾度となく聴いてきた名盤がQUADではどう鳴ってくれるのか、オーディオ的な楽しみも加わってきた。
休日の昼下がりの午後、ストリングスの響きで癒されようと、大好きなモーツァルト後期6大交響曲を一気に聴き通してみる。
数ある後期6大交響曲のアルバムの中から、自分にとってのマイベスト盤の一つ、クーベリック&バイエルン放送交響楽団の演奏で('80年録音 ヘラクレスザール、ミュンヘンにて録音、CBSソニー国内盤)。CD初期の頃('85年頃発売)の貴重な3枚組盤のもの。
3枚組ディスクで(Disc1:
・交響曲第35番 ニ長調「ハフナー」
・交響曲第36番 ハ長調「リンツ」
Disc2:
・交響曲第38番 ニ長調「プラハ」
・交響曲第39番 変ホ長調
Disc3:
・交響曲第40番 ト短調
・交響曲第41番 ハ長調
一聴して…さすがQUAD、第一印象の美音そのもの。それまでは聴けなかった音で鳴ってくれた。バイエルン放送響のストリングスセクションの音がこれまではやや薄く、ややこもり気味に感じていたが、ここでは鮮明に聴こえてくる。耳を澄ますと木管奏者のキー・タッチのノイズも聞こえてくる。
従来はトールボーイタイプだったが、音場感や定位がより出てきたのはブックシェルフタイプの強みか。ホールの立体感や空気感がより感じられる。
肝心の演奏だが、力みのない、実に自然体な演奏。自然体というのは裏を返せば緊張感を欠く印象にもなりがちだが、ここでは指揮者と奏者双方の阿吽の呼吸が見事に反映された名演となっている。
特にストリングスセクションの音色の美しさとバランスの良さは特筆すべきだろう。ドイツ系のオケは低域が目立つ重厚感ある演奏が多い中、サウンドバランスが取れ、均一感のあるバイエルン放送響のストリングス・トーンは耳にも実に心地良い。ちなみに、バイエルン放送響の明るく開放的な音色はQUADとの相性もいいようだ。
クーベリックが1961年にバイエルン放送響に就任して以降、18年の長きに渡って築き上げてきたトレーニングと相互の信頼関係があったからこそなせる技だと思う。
交響曲個々には、ライブ感ならではの高揚感の点で、ジュリーニ&フィルハーモニア管のプロムス盤の素晴らしい「リンツ」もあるが、6大交響曲としてはこのクーベリック盤が一つの理想的な名演を築いたといってもいいだろう。