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上映終了直前にスター・ウォーズの最新作となる「最後のジェダイ」(エピソード8)を観た。スクリーンで観たのは何年ぶりだろう。3Dメガネを装着しての3Dデジタルシネマでの鑑賞。1977年の公開から約40年、映像も音も進化を遂げ、シネコンならではの大迫力を堪能できた。一つ残念だったのは、1作目の「新たなる希望」(エピソード4)から出演していたレイア姫役のキャリー・フィッシャーが2016年12月に亡くなっていたこと(享年60歳)。そんなキャリー・フィッシャーを偲んで、「レイア姫のテーマ」をエントリーしたい。
スター・ウォーズというと、どうしても「メイン・テーマ」や「ダース・ベーダーのテーマ」のようなブラス重視のサウンドを思い浮かべるが、登場人物を描いた曲もハートフルでとても素晴らしい。「レイア姫のテーマ」での冒頭のフルートとオーボエの掛け合い、ホルンによる主旋律、後半のストリングスの使い方はどこかチャイコフスキーや、ワーグナー的な作風との共通点を感じる。
こだクラでは原曲のオーケストラ編にその他アレンジを加えた音源は計10にのぼった。まずはオーケストラ編から。

【オーケストラ編】
■ジョン・ウィリアムズ指揮 ロンドン交響楽団
 (1977年3月、アンヴィル・スタジオにて収録、RCA海外盤、ジャケット画像上段左)


まずはサントラから。テンポはやや早め。一つ一つの旋律がセリフのような明瞭な語り口。フルート、オーボエ共にややオンマイク気味なのはスタジオ録音ゆえか。今聴いても新鮮味がある音源。ホルンソロは当時の首席ホルン奏者、デイヴィッド・クリップスが担当。

■ズービン・メータ指揮 ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
 (1977年12月録音、U.C.L.Aロイスホールにて収録、デッカ海外盤、ジャケット画像上段中)


この曲の持つドラマ性とシンフォニックさがうまく掛け合わさった演奏。メータならではのタクトさばきの巧さを感じるのは後半。ドライブをかけながらクライマックスに向けて一気に駆け上っていく。サントラとわずか半年違いの録音ながら、当時のサントラを既に超える演奏がここにある。

■チャールズ・ゲルハルト指揮 ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
 (1977年12月録音、キングズウェイホールにて収録、BMG国内盤、ジャケット画像上段右)


精緻に練り上げられた演奏。テンポは全体を通じて遅めだが、ソロも演奏もバランスが取れている。後半、遠くの地平線から徐々に太陽が昇っていくような光景は、ワーグナー・サウンドのようだ。メータと同タイミングの録音ながら、描き方の違いが興味深い。

■ジョン・ウイリアムズ指揮 ボストン・ポップス
 (1980年6月録音、シンフォニーホール、ボストンにて収録、フィリップス海外盤、ジャケット画像下段右)


サントラを指揮したジョン・ウィリアムズが、1980年に就任したボストン・ポップスでのファーストアルバムに収録した音源の一つ。映画が空前の大ヒットとなり、精神的にも余裕ができた時期だったのだろう、サントラでは追求しきれなかった世界が見事に表現されているのを感じる。ホールのふくよかな残響もプラスに働いており、録音も秀逸。

■ ロイ・バッド指揮 ロンドン交響楽団
 (1985年頃?録音、HERMES海外盤、ジャケット画像下段中)


サントラを担当した本家ロンドン響によるもの。冒頭からフルートの巧さが際立つ演奏。まるで、ドビュッシーの作品か、何かのフルート協奏曲を聴いているかのよう。サントラと同じ奏者と思われるが、ここでは段違いに巧い。後半部の盛り上がりも素晴らしいが、クライマックスの全奏でトランペットが音を盛大に外してるところが惜しい。録り直しをしていないあたりはスタジオ仕事でも多忙を極める名門オケならではか。

■ヴァルジャン・コージアン指揮 ユタ交響楽団
  (1983年7月録音、ソルトレイクシティにて収録、VARESE SARABANDE海外盤、ジャケット画像下段中)


ソロを含めて今回のオケ版の中ではやや淡白に聴こえるが、後半はエンジンがかかり、全体を通じては推進力のある演奏に仕上がっている。コージアンならではのタクトさばきなのだろう。

■山本直純指揮 NHK交響楽団
 (1989年7月NHKホール、キング・インターナショナル国内盤、ジャケット画像下段左)


以前エントリーした「スター・ウォーズ組曲」の中の一曲。ここでも欧米のオケに負けず劣らず立派な演奏を聴かせてくれる。テンポは一定だが、後半のストリングズに呼応するホルンの熱い雄叫びはまさにワーグナー・サウンド。フルートソロも巧い!

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【吹奏楽編】
■加養浩幸指揮 土気シビック・ウィンド・オーケストラ
 (2005年2月録音、芝山文化センターにて収録、CAFUA国内盤、ジャケット画像左上)


イーストマン・ウィンド・アンサンブルのディレクターとしてもお馴染みだったドナルド・ハンスバーガー編曲よるもの。原曲に忠実にアレンジされているのが嬉しい。冒頭からしっかりと歌われるホルンを始め、フルート、オーボエ共に素晴らしい吹きっぷり。アマチュア団体ながら完成度の高い演奏ができることを証明してくれた。

【ブラスアンサンブル版】
■ザ・デンバー・ブラス
 (2005年6月録音、ハミルトン・ホールにて収録、klavier-record海外盤、ジャケット画像右上)


金管12名から成る珍しいブラスアンサンブル版。編曲は本ブラスのバス・トロンボーン奏者が担当。フルートやオーボエによる聴きなれたソロがここではトランペットを始め、全てブラスによって奏でられるのが新鮮。この名曲に新たな響きを生みだしている。

【オーボエソロ版】
■若尾圭介(オーボエ) ボロメオ弦楽四重奏団
 (1999年3月、ロサンゼルスにて収録、DENON国内盤、ジャケット画像下)


1990年よりボストン・ポップスの首席奏者(ボストン響準首席奏者)を務める若尾圭介氏によるもの。アルバム「若尾圭介プレイズジョン・ウィリアムズ」に収録。丸山和範編曲。原曲では、オーボエよりもフルートやホルンソロが目立つだけに、オーボエファンには大歓迎されるであろう音源。実際、曲のテイストがオーボエに合っているし、オーボエならではの温もりのある音がマッチしている。ジャケット写真からジョン・ウィリアムズとの友情を窺わせる。

【参考:こだクラで過去に取り上げた「スター・ウォーズ」関連のブログ】
■最新ディスクより~山本直純&NHK交響楽団による「スター・ウォーズ」組曲
■「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」公開記念~コージアン指揮ユタ響による「スター・ウォーズ三部作」
■ロンドン響による映画・TVサントラ選④~ジョン・ウィリアムズによるアカデミー賞作品集
■【追悼】 伝説に残るロンドン交響楽団の首席トランペット奏者 モーリス・マーフィー
■映画ファン必聴!英国の名門、ロイヤル・フィルによる映画音楽アルバム「FILMHARMONIC」
■ウィーン・フィル流「スター・ウォーズ」サウンド!~Trp元首席ハンス・ガンシュが率いるスーパー集団
■真夏の星空に・・・おまけ~ロンドン交響楽団によるスペース・ムービー・テーマ集
■真夏の星空に・・・その②:組曲「スター・ウォーズ」~ズービン・メータ&ロス・フィル盤
■音大ウィンド・オケ(洗足学園&昭和音大)、真夏のバトル!~コンサート鑑賞記(8月5日ミューザ川崎)
■ダース・ベイダーとスラットキンの意外(?)な関係~セントルイス響のマーチ・アルバム