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ロシア物プログラムが演奏されるコンサートは一般的に集客力があるように思う。それは日本だけでなく、海外のコンサートでも同様の現象だと思う。
チャイコフスキー、ラフマニノフ、ショスタコーヴィッチといった交響曲や協奏曲でその名を轟かせた大物の作曲家の他に、グリンカやムソルグスキー、R=コルサコフといった管弦楽曲の分野で秀作を残している作曲家の存在、そして何より、どの作曲家の曲もメロディーに親しみやすさが感じられる事がその所以なのかもしれない。
そこで今宵から数日に渡って、オール・ロシアン・プログラムのディスクを取り出して聴いて見たい。オケは日本、アメリカ、フランスの面々。日・米・仏のオケがロシア音楽をどう奏でてくれるのかというのも、興味津々な所。今宵はフランスを代表するオケ、パリ管弦楽団の演奏で。

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮、パリ管弦楽団
('72年1月録音、パリにて収録、EMI国内盤)

<収録曲>
①ボロディン:だったん人の踊り(リムスキー=コルサコフ編曲)
②リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 op.34
③リムスキー=コルサコフ:序曲『ロシアの復活祭』 op.36
④ムソルグスキー:交響詩『はげ山の一夜』(リムスキー=コルサコフ編曲)


実に色彩感豊かな演奏。ロシアものというと暗め、渋めの音色が時として似合うが、ここではフランスのオケらしい、多彩なパレットを持ったカラフルな演奏に仕上がっている。
指揮者ロジェストヴェンスキーの力がまた大きい。録音当時、40歳。ショスタコーヴィッチを指揮した時のロンドン交響楽団チャイコフスキーを指揮した時のBBC交響楽団と同様、抜群のオーケストラドライブとテンポ感をここでも発揮している。
豪快に鳴らす金管、強奏でのダイナミクス感はまさにロシアのオケさながらといえるだろう。

①は高校1年の吹奏楽の定期演奏会のメインで演奏した懐かしの曲。原曲の合唱版ではないが、最初から最後のクライマックスまで息を付かせない演奏。14分弱の曲でありながら一気に聴かせてしまう所にロジェストヴェンスキーのセンスを感じる。

②③は多彩なパレットを持つ作曲家の曲だけに、パリ管のカラーにも実にマッチしている。
全体的には欲をいえば、もう少し低音域に厚みがほしい所だが、これもパリ管のカラーなのだろう。
しかしながら、英・仏のオケと共演してこれだけの名演を聴かせてくれるロジェストヴェンスキーの才能は見事というしかない。彼の西側諸国での活躍を無視できなかったソビエト政府が、'82年に彼専用のオケ、ソビエト国立文化省交響楽団を創設したのも無理もない事だろう。

録音はほどよい残響で臨場感があり、最新リマスタリングによってかなり改善されていると感じる。

ロシアン・ナイト第一夜から心躍らせる演奏となった。