自分にとって、グスターヴ・ホルスト(1874-1934)の第1組曲の原点といえる思い出の名盤と、最近出会った名盤がある。ホルストの第1組曲については、本ブログでも以前米国・英国編と日本編の計10枚のディスクを取り上げたが、原点となる名盤は、作曲者ホルストの一人娘であるイモージェン・ホルスト(1907-1984)が1965年、彼女が58歳の頃に英国の名門バンドとレコーディングした音源。録音から既に60年以上が経過しているが、この音源に特別な思い入れがあるのは、高校生時代の文化祭でホルストの第1組曲を演奏した頃、お手本としていたのがこのイモージェン・ホルスト盤だったこと。当時、東芝EMIから発売されていた音源で、図書館で借りたCDをカセットテープに録音していたように思う。何度となく聴き込んでいたが、まさにお手本にふさわしい音源だった(もう一枚はフェネル&クリーヴランド管アンサンブル盤)。社会人になってこの音源を探し求めていたが、このイモージェン・ホルスト盤が見つけられなかったところ、2012年にホルストの作品集が本家EMIよりリリース。その中にこのイモージェン・ホルスト盤が含まれていることを知り、すぐさま購入したものだ。各々のディスクの感想を綴っておきたい。
■ホルスト:吹奏楽のための第1組曲
イモージェン・ホルスト指揮 ロイヤル・エア・フォース・セントラル・バンド
(1965年7月19日録音、アビー・ロード・スタジオ、ロンドンにて収録、ジャケット画像左)
CD6枚からなる「HOLST THE COLLECTER'S EDITION」の3枚目に収録。落ち着いたテンポながら音楽的な推進力に富んだ演奏で、作曲者ホルストの正当な解釈者としての想いを感じる。特に第1楽章冒頭部分のコルネットの音色から醸し出される素朴さや、2楽章中間部のコルネットの暖かなソロは今聴いても心に響くし、3楽章のマーチは力で押さず、歌うところは歌いつつ、後半部では大きなクライマックスを築き上げている。全体として派手さはないものの、ミリタリーバンドで表現した一つの理想といえる演奏。
■ホルスト:吹奏楽のための第1組曲
レイフ・アルネ・タンゲン・ペデルセン指揮 王立ノルウェー海軍バンド
(2006年2月録音、Tonsberg Doomkirke, Tonsberg,Norwayにて収録、SRC海外盤、ジャケット画像右)
ホルストのミリタリーバンドの為の作品を集めた意欲的なアルバム「THE PRAISE OF KING OLAF」に収録。イモージェン・ホルスト盤と同様、正当で実にバランスの取れた演奏。しかもこの演奏が英国のバンドでなく、北欧のバンドによるものだったからなお驚かされた。創立は1820年というから歴史あるミリタリーバンドだ。無理のないテンポ感、各々の旋律が一つの線となってつながっていく統率感、室内楽的な濃密さ、いずれもイモジュン・ホルスト盤との共通点を感じる。上記の各楽章の聴き所のポイントもよく押さえており素晴らしい。指揮はノルウェーの名門、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団の首席クラリネット奏者のペデルセンが2003年よりこのバンドのタクトをとっている。オケ奏者且つクラリネット専門ゆえに、ハーモニーの効かせ方も長けていると思った。
偶然にも前回エントリーしたホルストの「惑星」もノルウェーのオーケストラ(ベルゲン・フィル)。ホルストと北欧との間に接点を感じる。
【こだクラ関連ブログ/ホルスト:吹奏楽のための第1・第2組曲】
■ホルスト:吹奏楽のための「第1組曲」「第2組曲」~国内バンド編(ディスク4選)
■ホルスト:吹奏楽のための「第1組曲」「第2組曲」~米国・英国編(ディスク6選)
■ホルスト:「吹奏楽のための第2組曲」他~N響が奏でる吹奏楽の世界!(8月1日ミューザ川崎)