自己流G線上のアリアの旅もいよいよ大詰め(^^) 室内オケの古楽器編、モダン楽器編に引き続き、シンフォニー・オケによるディスクを。シンフォニー・オケではアンコール・ピースとして演奏される事が多く、今回取り上げたディスクの中でも、アンコールでの貴重なライヴ録音が含まれている。また、有名なストコフスキー版を始め、マーラーによる編曲版も存在する等、改めて古今東西のアーティストから愛されている事が窺える。シンフォニー・サウンド好きの自分にとっては、どれも捨てがたい名盤ばかりだ。編曲別、年代順に並べてみた。(画像:左上から右回り)
○ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団
(1971年3月10日録音、スコティッシュ・ライト大聖堂にて収録、RCA国内盤)
オーマンディ&フィラデルフィア管の黄金期の録音で、彼らのバッハ・アルバムからの一曲。大先輩のストコフスキー版を使用かと思いきや、通常のオリジナルの編曲を採用している。ストコフスキーの生前は彼以外に演奏が認められなかったのだろう。
一歩一歩、しっかりとした足取りを持ちながら、フィラデルフィア・サウンドならではの壮麗さも兼ね備えた演奏に仕上がっている。
◎ヘルベルト・ケーゲル指揮 ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
(1989年10月11日録音、サントリーホールにて収録、Altus国内盤)
ケーゲル(1920-1990)の貴重なライヴ録音。魂が浄化されたようなアリア。この演奏を聴いてしまうと、他のアリアが聴けなくなってしまう程、深遠の極みに達している。
サントリーホールでの来日ライヴ。この公演の半月後、ベルリンの壁崩壊という大きな出来事が起こり、その翌年の11月にケーゲルはピストル自殺という壮絶な死を遂げている。東ベルリンのオケを振っていたケーゲルにとって、ベルリンの壁の崩壊が自らの立場を不安定にさせたことが要因とされているが、定かではない。
しかし、「運命」の後に、G線上のアリアをアンコールとして演奏したケーゲルの狙いは何だったのだろうか?自らの死を悟っていたのだろうか?これが世の無常というものだろか?
○マリス・ヤンソンス指揮 オスロ・フィルハーモニー管弦楽団
(1997年5月録音、オスロ、コンツェルトハウス、ノルウェイにて収録、EMI国内盤)
1979年から2000年までオスロ・フィルの音楽監督をつとめたマリス・ヤンソンスが、「ワールド・アンコール」と題した世界の名曲を録音したアルバムの中の一曲。
シンフォニー・オケのストリングス編成だけに、ダイナミクスを極力絞ることで、この曲の肝でもある静寂さをうまく出しだ演奏。小品を振ってもうまいヤンソンスの特質が出た演奏。
<マーラー編曲>
○リッカルド・シャイー指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
(2000年9月6日録音、コンセルトへボウ大ホール、アムステルダムにて収録、デッカ輸入盤)
以前エントリーしたディスク。マーラーにも愛されていた曲だった事がよく分かる。
<ストコフスキー編曲>
再評価高まるレオポルド・ストコフスキー(1882-1977)による編曲を。
○ネーメ・ヤルヴィ指揮 デトロイト交響楽団
(1996年頃録音、自主制作盤)
こちらも以前エントリーしたディスク。'90~'05年まで音楽監督を務めていた頃の録音で、自主制作盤ならではの、貴重なレア音源。
冒頭から主旋のチェロをスムーズに流し、実に心地よく聴かせてくれる。聴かせ上手のヤルビィならではのアプローチ。
○ホセ・セレブリエール指揮 ボーンマス交響楽団
(2005年6月録音、プーレ、ライトハウス、コンサートホールにて収録、NAXOS輸入盤)
慈悲深さを感じる名演。ストコフスキー版をこんなに切々と語り上げたアリアはそうない。
ストコフスキーの弟子ともいえるウルグアイ出身のセレブリエールの指揮によるもので、ストコフスキー協会も公認のアルバム。20代の頃、ストコフスキーと共に仕事をしただけあって、バッハの核心を失わない、ストコフスキーの見事なオーケストラ・トランスクリプションを現代に見事に蘇らせてくれた。天国のストコフスキーもきっと喜んでいるに違いない。
(金管・木管・鍵盤楽器編に続く)
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