ショルティとロンドン交響楽団によるチャイコフスキー「交響曲第5番」の歴史的名演(1994年のザルツブルク音楽祭)で、首席トランペット奏者のモーリス・マーフィーに触れていた折り、Net上で、モーリス・マーフィーが10月28日に亡くなったという訃報に接した(10月29日付 BBCニュース)。享年75歳。2007年にロンドン響を引退してから3年後の事だった。マーフィーについては、既に本ブログでも何度も取り上げていたが、まさしく、伝説に残るトランペット奏者の一人だった。
自分にとって何よりの思い出は、1997年のロンドンでのプロムス公演、2002年の来日公演で2度の実演に触れられたこと。
特に、2002年10月の来日公演(会場:大分グランシアタ)で、ピエール・ブーレーズの指揮でマーラーの交響曲第5番を聴けたのは大きな財産となった。
当時マーフィーは67歳。国内であれば、一線を退き、引退してもおかしくない年齢だが、顔を紅潮させながら難易度の高いパッセージも見事に吹き切る姿が印象的で、全体のサウンドの中に埋没しない存在感のあるトランペット・サウンドは、マーフィーならではだった。もう一人の首席で、彼の弟子でもあるロッド・フランクスは、病気療養で来日できないというアクシデントに見舞われていたが、それは後から知ったニュースだった。
約30年に渡るロンドン響での在籍期間中に、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルやロンドン・シンフォニー・ブラスでのアンサンブル活動の他、映画界での功績も大きかった。彼の名前は知らなくても、「スター・ウォーズ」や「インディ・ジョーンズ」、「スーパーマン」、「バットマン」等のサントラで、あの有名なテーマを奏でるトランペットの人、と言えば分かりやすいかもしれない。
これらのサウンドは、映画の感動と共に、多くの人々の耳と心に残っていることだろう。その後、ジョン・ウィリアムズ作品のサントラ(「7月4日生まれて」「JFK」等)に登場するボストン響の元首席、ティモシー・モリソンらにも大きな影響を与えたに違いない。
最後に、本ブログでエントリーしたモーリス・マーフィー関連のリンクを以下に掲載し、追悼の意を表したい。
これからも、数多くの音源を通じて彼のサウンドは人々を感動させていく事だろう。
【本ブログでのモーリス・マーフィーの関連リンク】
■チャイコフスキー:交響曲第5番~ショルティと名門オケ(シカゴ響・ロンドン響)によるディスク3選(2010年11月28日)
■バーンスタイン没後20年~ロンドン響による「ウェスト・サイド・ストーリー」よりシンフォニック・ダンス(2010年9月11日)
■納涼特集!ホルスト:組曲「惑星」~ロンドン交響楽団によるディスク4選(2010年7月31日)
■ショスタコーヴィチ:交響曲第5番「革命」~息子マキシムによるディスク2選(ロンドン響/プラハ響)(2010年2月7日)
■期待の俊英も登場!ロンドン交響楽団ブラス・クインテット来日公演(1月25日 東京文化会館小ホール)(2010年1月30日)
■アンダーソン生誕100年!~「トランペット吹きの休日」「トランペット吹きの子守歌」ディスク11選(2009年12月23日)
■ディスク世界遺産~ロンドン響の名トランペット奏者、モーリス・マーフィーの協奏曲名盤(2008年11月26日)
■『ウェスト・サイド・ストーリー』③~ブラス・アンサンブルによる名編曲「エリック・クリーズ版」3選(2008年2月17日)
■ムソルグスキー:「展覧会の絵」 名手達の響宴~チェリビダッケ&ロンドン響1980年日本公演DVD (2007年10月28日)
■英国クラシック見聞記~④サイモン・ラトル、コリン・デイヴィスが登場!('97.9/10~12) (2007年9月15日)
■真夏の星空に・・・おまけ~ロンドン交響楽団によるスペース・ムービー・テーマ集 (2007年8月28日)
■真夏の星空に・・・その③:「ツァラトゥストラはかく語りき」~ティルソン・トーマス&ロンドン響盤 (2007年8月21日)
■「のだめカンタービレ」陰の立役者~ジェームス・デプリーストのマーラー交響曲第5番~(2007年1月14日)