2024年はブルックナー生誕200年だが、一方でホルスト生誕150年のアニバーサリーでもある。英国では2022年のヴォーン・ウィリアムズ生誕150年に続きホルストで賑わいをみせていると思うが、国内でも特に吹奏楽を中心にホルスト作品が意識されている様子が窺える。
管弦楽作品では組曲「惑星」はやはり彼の代表作であるだけに外せない。個人的には学生時代、吹奏楽部で文化祭のメインプログラムに組曲「惑星」より「木星」を演奏したことは今も良き思い出となっている。
今年に入ってこだクラ所有の「惑星」のディスクを聴いてきた記録と、その一言感想メモを以下に綴っておきたい。
(カッコ内は鑑賞した曲のコメントを記した日付)※8月31日現在:16ディスク

■ズービン・メータ指揮ニューヨーク・フィルハーモニック
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1989年録音。メータにとっては1971年のロサンゼルス・フィル以来の再録音。遅めのテンポ設定が原因か、惑星に欲しい機動力や推進力が感じられず、やや期待外れだった。トランペットのフィリップ・スミス等、金管群の巧さは存分に味わえる。(24年8月31日記)

■グスタフ・ホルスト指揮 ロンドン交響楽団
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以前本ブログでもエントリーした組曲「惑星」より「木星」をホルスト自身の指揮、ロンドン交響楽団との1926年録音を改めて聴く。
6分55秒で駆け抜ける「木星」の速さに今更ながら驚き。これがホルストの意図したテンポなのか、もしくは当時の録音時間の制約によるものなのかも気になるところ。(24年8月18日記)

■マルコム・サージェント指揮 BBC交響楽団
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以前本ブログでもエントリーしたライヴ録音で愛聴する1965年のロイヤル・フェスティバル・ホールでの公演盤。
多少荒削りな所はあるけど、サージェント の各惑星の描き分けが実に巧みで白熱した名演。わずか3分14秒で駆け抜ける「水星」は世界最速では?(24年8月12日記)

■アンドレ・プレヴィン指揮 ロンドン交響楽団
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プレヴィンの組曲「惑星」といえば外せないのがロンドン交響楽団との1973年録音。スペクタキュラーぶりはやはりロンドン響で、まぎれもなく1970年代の名盤。彼らが4年後にスター・ウォーズを録音する事になろうとは!
エンジニアの名手、クリストファー・パーカーの臨場感ある収録も素晴らしい。(24年8月4日記)

■アンドレ・プレヴィン指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
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プレヴィンにとってはロンドン響との1973年の録音に続く1986年の再録音。TELARC得意の高品位な収録で、オルガンの重低音の迫力はすごいけど空間的な拡がりはやや乏しく感じた。同オケでは演奏も含めジェームズ・ジャッド盤の方がお気に入り。(24年7月22日記)

■コリン・デイヴィス指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
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英国指揮者コリン・デイヴィスが初顔合わせのベルリン・フィルと共演した1988年録音盤。
学生時代、吹奏楽部で「木星」を演奏する際のお手本にしていた音源。重心あるサウンドはやはりベルリン・フィルだけど、重々しくならずデイヴィスの描く惑星が見事に具現化された名演。(24年7月21日記)

■チャールズ・マッケラス指揮 ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団
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1988年録音。久しぶりに再聴してマッケラスの英国音楽への手腕の確かさとオーケストラのダイナミックレンジの広さに驚かされる。音場豊かなホールトーンも素晴らしい。まさに名盤。(24年6月27日記)

■ジェームズ・ジャッド指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
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1991年録音。弦以上に管打寄りのバランスで録られ、重量は軽めだけどDENONらしいクリアなサウンド。オケは巧く天王星後半部の金管はすさまじい迫力。海王星の合唱は女声ではなく名門キングズ・カレッジ合唱団なのも英国ならでは。(24年6月12日記)

■リチャード・ヒコックス指揮 ロンドン交響楽団
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1987年録音。さすが映画サントラでスター・ウォーズを奏でたオケだけに実に巧い。「火星」は機動力抜群、「木星」や「天王星」はもう少し切れ味が欲しいけど金管は群を抜いている。ヒコックスのロンドン響副客演指揮者就任2年後の貴重な音源。(24年5月29日記)

■ジェームズ・ロッホラン指揮ハレ管弦楽団
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1975年録音。ロッホランの仕掛けのうまさが活きており、惑星個々の描写に長けた名演。ダイナミクスの付け方がうまく、特に木星〜土星〜天王星にかけてはストーリー性が感じられる。(24年5月22日記)

■マーク・エルダー指揮 ハレ管弦楽団
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2001年録音。「木星」は有名な中間部に共感。コーダも鋭い。注目は7曲目「海王星」の後、切れ目なくコリン・マシューズ作曲「冥王星」が演奏されている点。現代にタイムスリップ、ホルストとはまた異なる音世界が広がる。(24年5月21日記)

■ウィリアム・スタインバーグ指揮 ボストン交響楽団
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1970年録音。やや荒削りなところがあけど、ボストン響のダイナミックな迫力が直に伝わる名演。
金管が明瞭、木星では名手アルマンド・ギターラのトランペットが冴え渡る。小澤征爾&ボストン響の1979年録音盤との比較も興味深い。(24年5月10日記)

■アンドルー・デイヴィス指揮 トロント交響楽団
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1986年録音のEMIデビュー盤。全体的にすっきりと見通しが良く、「水星」や「土星」のような機動力が求められる曲にもコントロールが行き届いていた演奏。デュトワ&モントリオール響の名コンビも同年に録音していて興味深い。(24年4月23日記)

■小澤征爾指揮 ボストン交響楽団
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1979年録音。デジタル移行直前のアナログ録音でボストン響の妙技と彼らの本拠地シンフォニー・ホール音響の良さを堪能。重すぎず、機動力の高い「火星」や、中間部の主旋律を前面に押し出し、共感を持ってたっぷりと歌わせた「木星」が印象的。(24年2月14日記)

■エイドリアン・ボールト指揮 BBC交響楽団
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1973年のPromsライヴ盤。ボールトといえば組曲「惑星」の初演指揮者としても有名だけど当時84歳。やや荒削りながら実に豪快な演奏。ジョン・ウィルブラハムのトランペットは存在感ある鳴りっぷり。(24年2月5日記)

■(吹奏楽版)ダグラス・ボストック指揮 オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ
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2023年1月のオール・ホルスト・プログラムのライヴアルバムに収録。マーリン・パターソンによる吹奏楽編曲。オリジナル通りの調性で、まるで吹奏楽版が原曲だったかのような名アレンジ。英国出身の指揮者ボストックの的確なタクトでオオサカシオンからシンフォニック且つスケールの大きな演奏を引き出していて、改めて各楽曲の素晴らしさを再発見。(24年7月6日記)



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