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昨年、友人が出演した演奏会でジェイムズ・バーンズの名曲「アルヴァマー序曲」の実演に接したのがきっかけで、ディスクでも最近はよく聴いて楽しんでいる。この曲のタイトルとなっている「アルヴァマー」は、もともと、ゴルフ場を経営している2名の経営者(アルヴァさんとマリーさん)の名前を組み合わせたネーミングだという。雄大な曲想と、ユニークなネーミングとのミスマッチが面白い。また、1981年の作曲から約30年近くを経た今も、初級からプロまで、多くのバンドで愛奏されている。「アパラチアン序曲」と共に有名な曲。今回、2つのウィンド・オーケストラによる演奏と、エレクトーン編曲版というレアな音源を加えた3つのディスクを聴き比べをしてみた。

○木村吉宏指揮 広島ウィンド・オーケストラ
 (2003年9月録音、さくらぴあ大ホール、広島にて収録、BRAIN MUSIC国内盤)


以前もエントリーした木村吉宏&広島ウィンド・オーケストラの一連の吹奏楽シリーズ「BCL」に、この「アルヴァマー序曲」が収録されているのを知っており、最近購入したもの。バーンズの「交響曲第3番」を大阪市音楽団との共演で名演を残してくれた木村氏が振った録音だけに、興味はつきない。

聴き慣れているはずの曲が、実に新鮮に聴こえる演奏。それは、これまで幾度となく演奏してきたであろうスコアを改めて客観的に捉えた事で、この曲に新たな息吹が注ぎ込まれたような感覚を覚える。実際、楽譜に何ヵ所もの修正を施して録音に臨んでいることからも、木村氏の自信の表れが窺える。
演奏は力むことなく、常にハーモニーの調和が保たれており、楽器間のバランスも素晴らしい。ただ、欲を言えば、演奏自体にもう少しパッションを感じさせても良かったような気がする。この曲には、もっと名演が生まれる余地があるように思う。

空気感、吹奏感といったウィンド・オーケストラならではの特性を見事に捉えた録音もいつもながらに素晴らしい。全体として柔らかいサウンドに仕上がっている。

○バーンズ指揮 東京佼成ウィンド・オーケストラ
  (1990年録音、Asaka City Hallにて収録、佼成出版社国内盤)


バーンズ自身の指揮による東京佼成ウィンド・オーケストラとの貴重な録音。アルバム「ぺーガン・ダンス」に収録。作曲家自身の指揮だけに、期待して聴いたのだが、残念ながら自分の期待には届かなかった。テンポが全体的にスローで、抑揚がない演奏になってしまっており、バーンズ作品の持ち味であるシンフォニックさが感じられない。また、ややデッドな録音もその一因かもしれない。
もともと、この曲は米国のジュニアハイスクールの為に書かれているが、日本のアマチュア・バンドのお手本としての意識のゆえか、演奏が安全運転になっている傾向があるように感じられた。実演だとまた違った演奏になっているだろうと思われるだけに、ライヴで聴いてみたかった。

○平沼有梨(エレクトーン)
 (Qism国内盤)


エレクトーンの世界でもこの曲は人気のようで、何と!エレクトーンによる編曲も存在。自分のような吹奏楽経験者には嬉しい。演奏はエレクトーン奏者の平沼有梨氏による演奏。アルバム「1999 classics」に収録。
ここでは主旋律がストリングスによって奏でられたオケアレンジに仕上がっている。
スタートレックのような壮大な宇宙の広がりを感じさせるスケールの大きさは、まるでSF映画の「スタートレック」のよう。アルヴァマーの持つ世界感を電子楽器で実にうまく表現できている。

【続編】
ジェイムズ・バーンズ「アルヴァマー序曲」ディスク7選~今も愛奏される吹奏楽の名曲(続編)