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2013年はワーグナーヴェルディの生誕200年だが、英国ではベンジャミン・ブリテンの生誕100年のアニバーサリーでもあり、ブリテン・イヤーで盛り上がっているようだ。ブリテンといえば彼が31歳の時に作曲した「青少年のための管弦楽入門」が有名。こだクラでは計9種類のディスクを取り上げ、改めて聴き比べを行ってみた。さて、マイベスト盤に輝くディスクやいかに?(ジャケット画像順:各段共左より右)

【ロンドン響3選】
■ベンジャミン・ブリテン指揮 ロンドン交響楽団
 (1963年録音、キングズウェイホール、ロンドンにて収録、DECCA海外盤)


作曲者本人の指揮による貴重な音源。ブリテンはイギリス室内管弦団との交流が長かったが、本作や「戦争レクイエム」等、編成の大きな作品はロンドン響とレコーディングを行っており、ロンドン響には熱い信頼を寄せていたようだ。1960年代ながらデッカの鮮明な録音でステレオ感いっぱいに捉えられている。本作の模範となる演奏。

■サー・チャールズ・マッケラス指揮 ロンドン交響楽団
 (1990年前後録音、ワトフォード・タウン・ホールにて収録、CARA海外盤)


ジェフリー・サイモンが立ち上げたCARAレーベルの音源。マッケラス盤はチャプターに加え、小澤盤同様にナレーション(ナレーター:ベン・キングズレー)が付いており、まさに青少年向けの仕様となっている。他の2つのロンドン響と比較すると、やや大人しく感じられなくもないが、聴き所は押さえられた演奏。「ピーターと狼」もカップリングに収録されており、入門アルバムとして適した一枚。

■スチュアート・ベッドフォード指揮 ロンドン交響楽団
 (1991年4月、バービカンセンター、ロンドンにて収録、Collins海外盤)


今回エントリーした中でのマイベスト盤。ベッドフォード(b.1939)は生前、ブリテンと親交のあった指揮者。作曲家の意図が忠実に再現されている事に加え、ロンドン響の機能美が如何なく発揮されている。特に終曲のフーガは聴き所で、セッション録音ながら白熱したクライマックスが築かれており感動的だ。原盤はCollinsだが、後年Naxosに音源が買い取られており、現在は入手可能なので一聴を勧めたい。

【その他英国オケ4選】
■アンドレ・プレヴィン指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
 (1985年11月録音、ワトフォード・タウン・ホールにて収録、TELARC海外盤)


重厚感に満ちたブリテン。冒頭のパーセルの主題は、ホルンが効果的に鳴っており、サウンドのパノラマ感が英国的な気風を感じさせる。プレヴィンにとっては2度目のレコーディングで、ロンドン響時代、英国民にクラシックを大衆化させた功績があるだけに、この曲には親近感を抱いていたに違いない。

■アンドリュー・デイヴィス指揮 BBC交響楽団
 (1990年10月録音、St Augustines Churchにて収録、TELDEC海外盤)


ウォルトン等、英国作品を得意にしているアンドリュー・デイヴィスによるもの。会場は名演も数多く収録されているSt Augustines Church、録音は名エンジニアのトニー・フォークナーが担当。収録環境が整っているだけに個人的には期待していたのだが、肝心の演奏は至って中庸で、あまり印象には残らなかった。

■ウィリアム・ボートン指揮 イギリス交響楽団
 (1991年4月録音、シンフォニーホール、バーミンガムにて収録、Nimbus records海外盤)


イギリス交響楽団は当初イギリス弦楽管弦楽団として1980年に創設されたオケ。録音時は1991年にオープンしたバーミンガム市響の本拠地でもあるシンフォニーホールの初レコーディングだったようだ。メンバーは若手が多いのだろうか、演奏もフレッシュで、新ホールの豊かな残響録音に助けられて分離の良いサウンドに仕上がっている。

■サー・チャールズ・グローヴス指揮 ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団
(1977年7月録音、ロイヤル・アルバート・ホール、ロンドンにて収録、IMPクラシックス輸入盤))


今回エントリーしたディスクの中で唯一のライヴ音源。以前にエントリーしているので感想はそちらに譲りたいが、一般公開での初演オケは、このリヴァプール・フィルのようだ。

【米国オケ2選】
■ネヴィル・マリナー指揮 ミネソタ管弦楽団
 (1983年5月録音、オーケストラホール、ミネアポリスにて収録、EMI国内盤)


マリナーがアカデミー室内管以外のオケを振った音源という意味で貴重。母国の作品だけに手慣れた指揮振りを感じさせる。冒頭からオケも機敏な反応を見せるが、フーガは、やや精一杯という感じ。この辺りはブリテン作品に慣れた英国オケと差の出る部分かもしれない。マリナーが米国の学生達と集ったジャケットがユニーク。

■小澤征爾指揮 ボストン交響楽団
 (1992年4月録音、シンフォニーホール、ボストンにて収録、FONTEC国内盤)


小澤自身がナレーションを担当した貴重な音源。ナレーター口調でなく、語り口調なのは小澤氏のこだわりだろうか。当時、グラモフォンやフィリップスからリリースが続く中での国内レーベルからの発売だけに、まさに日本発の企画といえるだろう。演奏はボストン響ならではの妙技が冴え、スマートな演奏ではあるのだが、一方で英国的な気風は伝わってこなかった。秋葉原の石丸電気クラシック館のBGMで流れていたのを聴いて購入したのが懐かしい。