“がんばろう!日本”として、前回、「上を向いて歩こう」と「見上げてごらん夜の星を」をエントリーしたが、引き続いて洋楽編を。自分にとって、気持ちを奮い立たせてくれる曲の一つに、1976年公開の映画「ロッキー」のテーマ曲として知られるビル・コンティ(b.1942)作の名作「Gonna Fly Now」がある。小学生の頃、朝一で学校周りを全校生徒が走る行事があったが、そこで流れていたBGMがこの「ロッキー」のテーマだったのを思い出した。その後、このBGMを聴こうと思って買ったのが、名トランぺッターのメイナード・ファーガソン(1928‐2006)のものだったが、これは、オリジナルのサントラではないビッグ・バンド・アレンジのもので、ここで聴かれるファーガーソンのあまりのハイトーンぶり(!)に衝撃を受けたのを覚えている。
今回は、オケ版、吹奏楽版、ブラスバンド版の計4つのディスクを聴き比べながら、“がんばろう!日本”をロッキーのテーマで鼓舞したい。(ジャケット画像:左上より時計回り)
【ラウンド1:オケ版~国内オケ】
竹本泰蔵指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
(2006年月録音、杉並公会堂にて収録、キングレコード国内盤)
以前「ニュー・シネマ・パラダイス」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でエントリーした日本フィルによるもの。アルバム「シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー/バトル・スペクタキュラー」に収録。このシリーズの一連のアルバムは、ハリウッドから取り寄せたオリジナル・スコアを使用というこだわりようだけに、今回取り上げた4枚のディスクの中で、原曲の雰囲気を一番味わえるのが、まず嬉しい。このアルバムでは、「ロッキー組曲」と題されており、「ロッキーのファンファーレ」に続き、「ロッキーのテーマ(Gonna Fly Now)」が奏でられる。トランペットだけでなく、バックで小刻みに動くストリングスのディティールも、サントラさながら。TV番組のBGMで流れる事の多い「最終ラウンド(The Final Bell)」もメドレー形式でつながっており、ロッキーの世界観が楽しめる仕上がりとなっている。「ロッキー」をシンフォニック・オケならではのサウンドで堪能できるのが、本アルバムの最大の売りといえるだろう。収録会場の杉並公会堂の美しい残響も取り込まれた高品位な録音もポイント。
【ラウンド2:オケ版~海外オケ】
Tolga Kashif指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
指揮: David Arnold, Christopher Austin, Paul Bateman, Nigel Hess,
Tolga Kashif, Nic Raine、Debbie Wiseman
(2005~2006年録音、エンジェル・スタジオにて収録、RPO海外盤)
以前、エントリーした英国の名門オケの一つ、ロイヤル・フィルによるアルバム「FILMHARMONIC」に収録。冒頭のテーマをストレートに吹き上げるトランペットが心地よく、映画録音にも手慣れたロイヤル・フィルの強みを感じさせる。各楽器によって奏でられる各々のフレーズを、マイクがうまく捉えているのもスタジオ録音ならでは。中間部でチェロが奏でる旋律にもしっかりとスポットが当てられている。日本フィルと同じオケ盤ながら、よりサントラに近い、という点では、オリジナル・スコアを用いた日本フィル盤が一歩上、といったところか。
【ラウンド3:ブラスバンド版】
ニコラス・J・チャイルズ指揮 ブラック・ダイク・バンド
(2003年6月録音、Morley Town Hallにて収録、OBRASSO RECORDS海外盤)
アルバム「BLACK DYKE PLAYS GREATEST MOVIE HITS」に収録。コルネットが主旋律を奏で、トランペットにはない柔らかさも兼ね備えた音色で聴けるのは、ブラスバンドの特徴といえるだろう。何より、ブラスバンドの名門、ブラック・ダイク・バンドが快速なテンポで飛ばしているのが爽快で、スマート且つスタイリッシュなロッキーがここでは聴ける。演奏時間は短い(2分28秒)ながらも、ツボを押さえたAlan Fernieの編曲にも好印象。なお、この盤のみ、他のディスクと異なる調性が取られている。
【ラウンド4:吹奏楽版】
進藤 潤指揮 航空自衛隊航空中央音楽隊
(1992年録音、入間市民会館にて収録、キングレコード国内盤)
アルバム「史上最大の作戦/スクリーン・マーチ傑作選」に収録。「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」でお馴染みの岩井直溥氏による編曲だけに、国内の吹奏楽団では最もスタンダードで演奏回数も多いと思われるロッキー。冒頭、トランペットがやや詰まり気味でスタートするのが惜しいが、ドラムのノリも良く、充分、平均点に達する演奏。個人的には、自衛隊だけに、もう少し、マッチョなロッキーを期待したかった。