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昨年2017年の夏、これまでの常識を覆すイヤホンに出会った。きっかけは音楽専門誌「レコード芸術」誌に掲載された「5000円以内のクラシック用イヤフォン」と題されたオーディオ記事。クラシックに適したコストパフォーマンスのよいイヤホンはどれか?という比較試聴で、いくつか取り上げられたのイヤホンの内、クラシックソースに適したイヤホンとしてベストに選ばれたのが「intime 碧(SORA)」というブランドのイヤホンだった。超大編成を要するマーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」のようなシンフォニーも鳴らしきる評価のイヤホンだっだだけに、気にならないはずがない。すぐさま取扱店のイヤホン・ヘッドホン専門店の「e☆イヤホン」で購入。購入後、帰りの電車に乗る前にその場ですぐに耳に装着し、音源を再生した時の感動は忘れられない。一言でいうと、“圧倒的な臨場感”。それはこれまで出会ったことのない解像度の高い、リアリティのある音だった。普段使いのスマホから、ここまでリアルな音が引き出せるとは・・・。独自のセラミックツイータ技術が搭載されているところに、その秘密があるようだが、イヤホンもここまで進化したのか、との驚きを隠せなかった。
それから約一年、今度はその「intime 碧(SORA)」の弟分といえる「intime(アンティーム) 碧(SORA)-Light」 が発売、やはり気になって早速購入してみた。これがまた素晴らしい!2モデルが揃ったところで、今回改めてこの兄弟モデルの比較試聴を行ってみたい。結論からいうと兄弟ゆえの上位、下位の区別はなく、どちらにも特長があり、優劣は付け難かった。(画像:左はイヤピースを外した「intime 碧(SORA)」、右は「碧(SORA)-Light」)

■intime(アンティーム) 碧(SORA) *税込4,830円(18年9月現在)

まずは「intime 碧(SORA)」から。intimeシリーズに関心を持つきっかけとなった元祖モデル(2016年12月発売)。「碧(SORA)-Light 」と比較すると音の濃密度が高く、引き締まった感じがする。きめ細やかでクリアな音質は、まるでスタジオのモニターヘッドホンのよう。エッジが効き、高音域が多少刺さる傾向はあるが、エージングを施したり、コンプライなど他社製のイヤピースに交換してチューニングすることで改善できる。筐体のクロムメッキの真鍮もどっしりとしていて高級感がある。
どのソースもマルチに鳴らせるが、大編成のオケやブラスサウンドは上述の記事の通り迫力十分。「碧(SORA)-Light」と比較すると、特にブラス系の楽器や打楽器、ピアノ、ベース系が得意のようだ。例えばブラック・ダイク・バンドのブラスサウンドや、低域から高域まで超絶技巧が続くラフマニノフのピアノ独奏曲、山下達郎の「クリスマス・イヴ」でのギターのイントロ、ベース&ドラム、ボーカルに移り変わるサウンドの色調のリアルな鳴りっぷりに感動したものだ。モニター的にじっくりと音楽に耳を傾けたいときには、この碧(SORA)が適しているように思う。

■intime(アンティーム) 碧(SORA)-Light  *税込3,999円(18年9月現在)

2018年8月に発売された弟分のモデル。筐体が半分がスケルトン仕様になったのが「碧(SORA)」と外観上の違い。「Light」という名が付いた通り、軽量化が図られている。しかし、最大の特長はやはり音質。解像度の高さはそのままながら、音に拡がりが増し、且つ音がぐっとほぐれた感じになった結果、サウンド全体の見通しも良くなった。高音域の刺さり具合は「碧(SORA)」よりも収まっており、長時間聴いても疲れが出ないように感じる。
何より、このほぐれ感がよい。例えば、モーツァルトの交響曲やヘンデルの合奏協奏曲のようなストリングス中心の楽曲や、過去こだクラでもエントリーしたイザベル・ファウストのバッハの独奏ヴァイオリン、エヴァ・キャシディのような女性ボーカルの音源との相性が良いように思う。音圧が碧(SORA)よりも高いからだろうか、ボリュームが一メモリ分上がったような感じ。コンサートホールに例えるならS席の特上席から聴いているような空間性がある。通勤時間での鑑賞もより聴きやすくなったように感じる。今回の「碧(SORA)-Light」の登場は大歓迎だ。しかも「碧(SORA)」よりお値段もLightになっているのでこんなに嬉しいことはない。
各々のサウンドの傾向は、引き締まった音を聴かせる碧(SORA)は例えるなら男性的、一方、碧(SORA)-Light は音のほぐれ感と包み込まれるような空間性から、例えるなら女性的、といえるかもしれない。
なお、イヤピースがフィットするかどうかは重要。合わない場合はサイズを変えるか、他社製に交換するなどで試すことをおすすめしたい。

他社も含めたイヤホンの一般的なプライスからすると、エントリークラスに位置するイヤホンになるのだろうが、この2モデルに関しては、そのような分類に全く当てはまらない。個人的にもこれまでソニーゼンハイザーなど、大手メーカーのイヤホンを使ってきたが、少なくともこれまでに使用してきたイヤホンを超える満足感を与えてくれた。
兄弟モデルそれぞれに特長がある為、どちらが適しているかは実際に店頭で試聴して好みを確かめるしかないだろう。2モデルあれば、ソースによって個々の特長に合った使い分けもできる。音楽を楽しんでいく上で、自分の耳に合ったイヤホン選びは大切。少しずつ涼しくなってきた今日この頃、イヤホンの魅力にどっぷりとはまりそうだ。

【これまで取り上げたイヤホン関連の過去ブログ】
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