秋になったせいか、最近は聴く曲もさまざま。その一つにプロコル・ハルムが1960年代に放った大ヒット曲、「青い影」(英題:「Whiter Shade of Pale」)がある。ここで取り上げる演奏は国内を代表するキーボーディストで、オルガン奏者でもある重実徹氏(b.1959)で、2000年にリリースした初リーダー・アルバム「Organ J.」(ビクター国内盤)の収録曲。1986~2001年まで、山下達郎のツアー・サポート・メンバーであった事が、自分が重実氏の名を知るきっかけだった。
各種のヴィンテージ・オルガンを重実氏が一人で使い分け、多重録音によって構築された本アルバムは、達郎のアルバムに置き換えるならば、さながら一人多重アカペラの「On The Street Corner」といった所か。多くの人々に愛聴され、どことなく切なさが漂う「青い影」のメロディが、見事に洗練されたアレンジに仕上がっている。
特に聴き所は、ハモンド・オルガンがアドリブソロを奏でる後半部分。ハモンド・オルガンの音色は個人的に大のお気に入りで、それこそ、過去にブルーノート東京でハモンドオルガンの名プレーヤー達が集うライヴに行った事もある位だ。
透き通った音でありながら、オルガン特有のアナログらしさが何ともいえない味わいを生み出す。エレクトーンに代表される多音色を奏でる電子オルガンと違い、一音色だからこそ生み出せるオンリーワンの音楽がここにはある。
そして、ハモンドオルガンの音色は、「青い影」によく似合う。重実氏のアドリブ・プレイは冴えており、フェイドアウトでエンディングを迎える。そのせいではないのだが、またこの曲を始めから聴きたくなる。・・・というわけで、「青い影」は最近のヘビーローテーションになっている。秋は「青い影」がよく似合う季節のようだ。