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2009年に本ブログでジェームズ・バーンズの「アルヴァマー序曲」をエントリーし、はや9年が経過した。バーンズの代表作であると共に、吹奏楽のスタンダードといえる名曲でもあり、吹奏楽をやっていた人であれば、演奏経験や、どこかで聴いたことのある曲ではないだろうか。自分自身、演奏経験はなかったものの、友人の演奏に接したり、「アルヴァマー序曲」と曲構成の似た「アパラチアン序曲」を高校時代に演奏した懐かしい経験がある。当初、こだクラで所有していた音源は3つだったが、その後増えて現在は7種類に。音源が異なると印象も様々に異なってくる。特にテンポの違いは全体の印象をも左右する。そこで、前回エントリーしたディスクも含め、今回続編として計7種類の音源の演奏時間を記載する共に、改めて印象を綴っておきたい。

■渡邊一正指揮 東京フィルハーモニーウインドオーケストラ(ジャケット画像:上段左端)
 (2010年1月11日録音、オーチャードホールにて収録、ケイブ国内盤)【演奏時間:6分58秒】


アルバム「渋谷ブラスフェスタ2010」に収録。東京フィルの管打楽器セクションによる演奏。リズム、旋律の響かせ方にメリハリがあり、パッションが伝わってきて、アルヴァマーの良さを改めて実感できた音源。木管セクションが少ない分(メンバー39名中、木管セクションは12名、内、クラリネットは6名)吹奏楽編成上はややバランスを欠いているかもしれないが、汐澤&東京佼成ウインド・オケ盤で感じた爽快感が実演で見事に実現されている。クラシック畑の指揮者である渡邊にとって、先入観を持たず、自分ならこの作品をこう表現したいという指揮者視点で表現した好例だと思う。特典DVDにこの「アルヴァマー序曲」が収録されており、映像面でも楽しめるのが嬉しい。

■汐澤安彦指揮 東京佼成ウインドオーケストラ(ジャケット画像:上段左から2番目)
 (1982年頃録音、CBSソニー国内盤)【演奏時間:6分45秒】

 
アルバム「ジェイムス・バーンズ作品集」に収録。これぞアルヴァマー!と思った曲。今回エントリーした音源の中ではもっとも早い6分45秒の演奏時間。渡邊&東フィル版も充分に速かったが、更に約15秒近く縮まっており、これ以上快速なアルヴァマーの音源はおそらくないだろう。渡邊&東フィル版よりも後にこの音源を聴いたが、思わず感動してしまった。1981年の作曲の翌年にCBSソニーから国内リリースされ、当時の吹奏団体の演奏のお手本になった音源と思われるが、指定テンポよりも大幅に早かったために、その後、作曲者からも難色を示されたようだ。しかしながら、演奏自体に不自然さはなく、録音から35年以上経過した今でも、アルヴァマーの一つの理想的な演奏が示されていると思う。実演でこのような演奏が聴けたら拍手喝采は間違いないだろう。

■ジェイムズ・バーンズ指揮 東京佼成ウィンドオーケストラ(ジャケット画像:上段右から2番目)
 (1990年11月録音、朝霞市民会館にて収録、佼成出版社国内盤)【演奏時間:8分30秒】


アルバム「ペーガン・ダンス」に収録。汐澤&東京佼成ウインド・オケ盤が1982年にリリースされた約8年後にバーンズ自身による東京佼成ウインド・オケとのセッション録音が実現した。汐澤盤のような期待を持って聴くと、見事に裏切られる。両者の演奏時間の差は約1分15秒もあり、今回エントリーしたディスクの中でも最も遅い。元々、この曲は中学のスクールバンドから委嘱された曲だが、初演団体の演奏技術のレベルを考慮すれば、このようなテンポになるのかもしれない。その結果、よい意味では、初心者のバンドでも演奏しやすいものとなっているが、ドラマ性やパッションは残念ながら伝わってこなかった(作曲者自身もこの作品にドラマ性は求めてはいなかったのかもしれないが)。

■ジェイムズ・バーンズ指揮 シエナ・ウインド・オーケストラ(ジャケット画像:上段右端)
 (2015年7月4日録音、文京シビックホールにて収録、エイベックス・クラシックス国内盤)【演奏時間:8分12秒】


以前、交響曲第3番をエントリーしたアルバム「バーンズ!バーンズ!!バーンズ!!!」に収録。東京佼成ウインド・オケ盤から15年後の2015年の録音。年数による変化か、それともライヴゆえか、上記の東京佼成ウィンド・オケ盤より約20秒近く早くなっていた。東京佼成ウインド盤でも感じたことだが、対旋律もくっきりと浮かび上がらせており、吹奏楽としてのハーモニーや曲全体の見通しは実にクリア。これも作曲者の意図なのだろう。

■木村吉宏指揮 広島ウインド・オーケストラ(ジャケット画像:下段右)
 (2003年9月録音、さくらぴあ大ホールにて収録、BRAIN MUSIC国内盤)【演奏時間:7分53秒】


アルバム「アルヴァマー」に収録。美しく鳴らした演奏。楽譜に複数の改訂が加えられ、木村氏自身の研究成果も活きているのだろう。音響空間のおかげもあってハーモニーがほどよくブレンドされ、強奏でもうるさくない。それゆえか、終始演奏は控えめな印象で、パンチが感じられないのが残念。演奏時間は8分を切っている。

■丸谷明夫指揮 なにわ《オーケストラル》ウィンズ(ジャケット画像:下段中)
  (2011年5月録音、BRAIN MUSIC国内盤)【演奏時間:8分5秒】


アルバム「なにわ《オーケストラル》ウィンズ2011」に収録。指揮は高校吹奏楽の顔でもある大阪府立淀川工科高校名誉顧問の丸谷明夫氏。東京フィルのようなパンチを効かせたバリバリな演奏ではなく、作曲者の意図したテンポを忠実に守って演奏された印象を受ける。演奏時間もバーンズ&東京佼成ウインド・オケ盤とほぼ近い8分超え。特に中間部の木管セクションのハーモニーは美しく、オーケストラ・プレーヤーである奏者一人一人の力量の高さも窺えるが、何となく安全運転な印象は否めない。オーケストラの良い部分が吹奏楽にも活かされた演奏ではある。

■平沼有梨(ジャケット画像:下段左)
 (1999年頃録音)【演奏時間:7分30秒】


吹奏楽以外による音源も存在。アルバム「1999 Classic」に収録されたエレクトーンプレイヤーの平沼有梨氏によるオーケストラアレンジ。エレクトーンの世界でもこの曲は人気レパートリー曲のようだ。ストリングスが加わることで主旋律に雄弁さが増しており、終結部にはハープのグリッサンドも加わって実に豪快。演奏時間は7分30秒だが、実際に聴いてみると、無理のないテンポ感と感じた。このアレンジを実際のオーケストラで是非一度聴いてみたいものだ。

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