英国の名門ブラスバンド、ブラック・ダイク・バンドの最新アルバム「ジョン・ラター: ブラスによるアンセム、讃歌とグローリア」を購入。これまでクラシック作品やブラスバンドのオリジナル作品のアルバムをNAXOSレーベルからリリースしてきた彼らだが、今回、英国合唱界の大御所作曲家、ジョン・ラター(b.1945)作品を取り上げたアルバムが登場。ジョン・ラターといえば、以前本ブログでもエントリーしていたが、今回はオール・ジョン・ラタープログラムという意欲作だ。
ブラック・ダイク・バンドはラターはこれまでもCHANDOSレーベル時代にクリスマスアルバムでオリジナル作品やアレンジ曲を演奏してたことがあるし、合唱団とも、そのクリスマスアルバムや、ヘンデルの「メサイヤ」といった大作を世に送り出している。一方、アンセムといえば、かつて本ブログでもブラック・ダイク・バンドによる「Cathedralbrass」と題した賛美歌のアルバムもエントリーしており、ブラスバンドとの相性が良かっただけに、今回も大いに満足できる内容となった。編曲はブラスバンド界で活躍するリュク・ヴェルトメン(b.1968)によるもので、本レコーディングが世界初録音となる。収録曲は以下の通り。(カッコ内は昨曲年)
1.2つの讃歌(1974)
・No.1. Now thank we all our God/今、私たちはすべての神に感謝します
・No.2. All creatures of our God and King/私たちの神と王のすべての生き物
2. A Clare Benedicton/クレアの祝祷(1998)
3. What Sweeter Music/なんと甘美な音楽(1987)
4. Requiem: Pie Jesu/レクイエム - ピエ・イエズ(1985)
5. As the Bridegroom to His Chosen/選ばれし者の花婿として(1989)
6. Go Forth into the World in Peace/世界を平和に(1988)
7. Distant Land/ディスタント・ランド(自由への祈り)(1991)
8. The Lord Bless You and Keep You/主があなたを祝福し、あなたを守られるように(1981)
9. All Things Bright and Beautiful/全ては美しく輝き(1983)
10. For the Beauty of the Earth/このうるわしき大地に(1980)
11. This is the Day/この日は主イエスが造られた(2011)
12.グローリア(1974)
・I. Allegro vivace
・II. Andante
・III. Vivace e ritmico
ニコラス・チャイルズ指揮(1-11)ダリウス・バッティワラ指揮(12)
ブラック・ダイク・バンド
シェフィールド・フィルハーモニー合唱団(12)
(1-11:2019年7月,10月録音、Morley Town Hall, West Yorkshireにて収録、12:2019年10月録音、St Oswald's Church, Sheffield, South Yorkshireにて収録、NAXOS海外盤)
1曲目に収録された「2つの讃歌」はNo.1、No.2共にオリンピックファンファーレのような荘厳な響きでまず開始され、その後に讃歌が奏でられる。ラターの美しい讃歌には馴染みやすさがあり、それは合唱がブラスバンド版となっても一度聴くだけで親近感を覚えるのが彼の作風の持ち味といえるだろう。続く2~11曲目もブラスバンド版で聴いても何の違和感もなく、むしろブラスバンドのサウンドがラターの作品とマッチすることが当盤から感じられる。4曲目の「レクイエム - ピエ・イエズ」はプリンシパル・コルネット奏者のリチャード・マーシャルがソロを担当。ここではまさにマーシャルが聖歌隊のボーイ・ソプラノと化し、コルネットソロから敬虔さが感じられる。
本アルバムの最大の聴き所はメインプログラムに据えられた「グローリア」だろう。この曲は1984年頃にジョン・ラター自身の指揮で彼が設立したケンブリッジ・シンガーズと、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルとの共演アルバム「GLORIA:THE SACRED MUSIC OF JOHN RUTTER」の名盤(ジャケット画像下)が存在しているだけに、聴き比べできるのが興味深い。
グローリアは金管アンサンブルがオリジナルの指定。フィリップ・ジョーンズ盤は直線的なブラスの響きが合唱のハーモニーに壮麗さを増す役割となっているのに対し、ブラック・ダイク盤はブラスバンドと合唱のハーモニーが程よく融合してふくよかな響きが醸成されており、両盤ともにそれぞれの良さがある。
なお、当盤に収録されている「The Lord Bless You and Keep You」と「All Things Bright and Beautiful」は上記のアルバム「GLORIA:THE SACRED MUSIC OF JOHN RUTTER」に収録されているし、「This is the Day」も2011年のウィリアム王子とキャサリン・ミドルトンのロイヤル・ウェディングの為に作曲され、後にケンブリッジ・シンガーズによって録音されているのでそれらとの聴き比べも興味深い。
全体を通じ、今回のアルバムはブラック・ダイク・バンドの超絶技巧が駆使されたアルバムというよりは、優しい気持ちにさせてくれる祈りに満ちたアルバムとなった。
折しも、2020年はブラック・ダイク・バンドに限らず、英国を含めた世界中の音楽団体がコロナ禍で活動が制限され、大変な困難に直面している。本アルバムは昨年2019年に収録されていたのが幸運だったが、一日も早くリアルでの活動が再開され、また演奏が聴ける日を願ってやまない。願わくば、また来日公演も!
ブラック・ダイク・バンドはラターはこれまでもCHANDOSレーベル時代にクリスマスアルバムでオリジナル作品やアレンジ曲を演奏してたことがあるし、合唱団とも、そのクリスマスアルバムや、ヘンデルの「メサイヤ」といった大作を世に送り出している。一方、アンセムといえば、かつて本ブログでもブラック・ダイク・バンドによる「Cathedralbrass」と題した賛美歌のアルバムもエントリーしており、ブラスバンドとの相性が良かっただけに、今回も大いに満足できる内容となった。編曲はブラスバンド界で活躍するリュク・ヴェルトメン(b.1968)によるもので、本レコーディングが世界初録音となる。収録曲は以下の通り。(カッコ内は昨曲年)
1.2つの讃歌(1974)
・No.1. Now thank we all our God/今、私たちはすべての神に感謝します
・No.2. All creatures of our God and King/私たちの神と王のすべての生き物
2. A Clare Benedicton/クレアの祝祷(1998)
3. What Sweeter Music/なんと甘美な音楽(1987)
4. Requiem: Pie Jesu/レクイエム - ピエ・イエズ(1985)
5. As the Bridegroom to His Chosen/選ばれし者の花婿として(1989)
6. Go Forth into the World in Peace/世界を平和に(1988)
7. Distant Land/ディスタント・ランド(自由への祈り)(1991)
8. The Lord Bless You and Keep You/主があなたを祝福し、あなたを守られるように(1981)
9. All Things Bright and Beautiful/全ては美しく輝き(1983)
10. For the Beauty of the Earth/このうるわしき大地に(1980)
11. This is the Day/この日は主イエスが造られた(2011)
12.グローリア(1974)
・I. Allegro vivace
・II. Andante
・III. Vivace e ritmico
ニコラス・チャイルズ指揮(1-11)ダリウス・バッティワラ指揮(12)
ブラック・ダイク・バンド
シェフィールド・フィルハーモニー合唱団(12)
(1-11:2019年7月,10月録音、Morley Town Hall, West Yorkshireにて収録、12:2019年10月録音、St Oswald's Church, Sheffield, South Yorkshireにて収録、NAXOS海外盤)
1曲目に収録された「2つの讃歌」はNo.1、No.2共にオリンピックファンファーレのような荘厳な響きでまず開始され、その後に讃歌が奏でられる。ラターの美しい讃歌には馴染みやすさがあり、それは合唱がブラスバンド版となっても一度聴くだけで親近感を覚えるのが彼の作風の持ち味といえるだろう。続く2~11曲目もブラスバンド版で聴いても何の違和感もなく、むしろブラスバンドのサウンドがラターの作品とマッチすることが当盤から感じられる。4曲目の「レクイエム - ピエ・イエズ」はプリンシパル・コルネット奏者のリチャード・マーシャルがソロを担当。ここではまさにマーシャルが聖歌隊のボーイ・ソプラノと化し、コルネットソロから敬虔さが感じられる。
本アルバムの最大の聴き所はメインプログラムに据えられた「グローリア」だろう。この曲は1984年頃にジョン・ラター自身の指揮で彼が設立したケンブリッジ・シンガーズと、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルとの共演アルバム「GLORIA:THE SACRED MUSIC OF JOHN RUTTER」の名盤(ジャケット画像下)が存在しているだけに、聴き比べできるのが興味深い。
グローリアは金管アンサンブルがオリジナルの指定。フィリップ・ジョーンズ盤は直線的なブラスの響きが合唱のハーモニーに壮麗さを増す役割となっているのに対し、ブラック・ダイク盤はブラスバンドと合唱のハーモニーが程よく融合してふくよかな響きが醸成されており、両盤ともにそれぞれの良さがある。
なお、当盤に収録されている「The Lord Bless You and Keep You」と「All Things Bright and Beautiful」は上記のアルバム「GLORIA:THE SACRED MUSIC OF JOHN RUTTER」に収録されているし、「This is the Day」も2011年のウィリアム王子とキャサリン・ミドルトンのロイヤル・ウェディングの為に作曲され、後にケンブリッジ・シンガーズによって録音されているのでそれらとの聴き比べも興味深い。
全体を通じ、今回のアルバムはブラック・ダイク・バンドの超絶技巧が駆使されたアルバムというよりは、優しい気持ちにさせてくれる祈りに満ちたアルバムとなった。
折しも、2020年はブラック・ダイク・バンドに限らず、英国を含めた世界中の音楽団体がコロナ禍で活動が制限され、大変な困難に直面している。本アルバムは昨年2019年に収録されていたのが幸運だったが、一日も早くリアルでの活動が再開され、また演奏が聴ける日を願ってやまない。願わくば、また来日公演も!

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