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大ヒットの予感間違いなしのニュー・アルバムに出会った。「Gメン★75」時代の丹波哲郎のジャケットが強烈(!)な、その名も「THE 刑事(デカ)~究極の刑事ドラマ・テーマ集」というアルバム。昔懐かしの「太陽にほえろ」から最近の「踊る大捜査線」まで、収録曲は大ヒットした過去の刑事ドラマが中心。それを人気実力派のシエナ・ウィンド・オーケストラが吹奏楽アレンジで演奏しているのだから、吹奏楽ファンにはたまらない。これからの演奏会でポピュラー・ステージを考えている吹奏楽団には必聴のアルバムといえるだろう。もちろん、吹奏楽経験がない人が聴いても十分に楽しめる内容となっている。

収録曲は以下の通り。

1. ルパン三世 '80
2. スパイ大作戦
3. 鬼警部アイアンサイド
4. 刑事コロンボ [ミステリー・ムービーのテーマ]
5. 古畑任三郎
6. 踊る大捜査線
7. 相棒
8. はぐれ刑事純情派
9. 西部警察
10. 西部警察 PARTII
11. 大都会 PARTII
12. 大都会 PARTIII
13. テーマ (太陽にほえろ!)
14. 追跡 (太陽にほえろ!)
15. 危機 (太陽にほえろ!)
16. 衝撃 (太陽にほえろ!)
17. 青春 (太陽にほえろ!)
18. 愛 (太陽にほえろ!)
19. Gメン★75
20. 必殺!
21. 大江戸捜査網

竹本泰蔵指揮 シエナ・ウィンド・オーケストラ
(2008年11月、2009年1月録音、Soun Cityにて収録、エイベックス・クラシックス国内盤)


これらの曲を聴くと、何でもない日常が、どことなく事件性を帯びてくるように感じられるから、ドラマの力というものはすごいものだ(^^) 特に朝の通勤時に「太陽にほえろ」や「踊る大捜査線」を聴くと、テンションが上がってスリル満点!「古畑任三郎」を聴くと、田村正和のモノマネを思わずしたくなるのは自分だけではないだろう。「鬼警部アイアンサイド 」 は、初めて聴く曲名だったが、一聴して、普段TVでよく使用されるBGMだ!と気付かされる。

今回のアルバムを通じて色々な発見があった。“決めゼリフ”ならぬ、“決め旋律”には必ずと言っていいほど、トランペットの音色が用いられている事。例えば、「必殺!」の冒頭とエンディングはトランペット・ソロだし、「太陽にほえろ~青春」もトランペット・ソロなくしてあり得ない。この曲では、ハモンドオルガン・ソロも絶妙な役割を果たしている。全編に渡ってエレクトリック・ギターやベースが加わっている点もポイント。

また、相当なハイトーンが求められる曲も。「はぐれ刑事純情派」はわずか43秒ばかりの曲だが、トランペット・ソロにはハイFの音域まで登場し、メイナード・ファーガーソン張りのハイトーンが求められるし、「大都会 PARTIII 」もハイEが登場。聴き手には、馴染んだメロディーがさらっと聴けてしまうのだが、実際は、難易度が相当高いと思われる。
そんなハイトーン続出のトランペットを担当しているのは、ゲスト・プレイヤーではなく、シエナ・ウィンド・オケのメンバーのようだ。トランペットが大活躍のアルバムなので、ライナー・ノーツにメンバー・リスト(できれば全楽団員名で)は記載してほしかった。

なお、「ルパン三世」と「踊る大捜査線」は別の吹奏楽ヴァージョンを所有しているので、比較の意味で聴いても楽しめる。まず「ルパン三世」は、大江戸ウィンド・オーケストラによる演奏(アルバム「大江戸ウィンド・オーケストラ LIVE IN 2003」に収録、画像下/ジャケット左)。シエナ・ウィンド・オケとは違い、ニュー・サウンズ・イン・ブラスによる編曲版を使用しているが、ライヴ公演のアンコール曲である事に加え、スタジオ・プレーヤーやジャズ・プレーヤーが集った吹奏楽団だけに、ノリの良さはこちらに軍配が上がりそうだ。
また、もう一つの「踊る大捜査線」は、浜松交響吹奏楽団によるもの(アルバム「ライフ・ヴァリエーションズ」に収録、画像下/ジャケット右)。こちらは、本アルバムと同様、組曲形式だが、演奏時間が10分(本アルバムは約5分)と長く、「踊る大捜査線」の魅力を、よりたっぷりと味わえるのがポイント。主題歌「Love Somebody」も組曲の中で演奏されている。

録音は、残響成分があまりなく、スタジオ収録らしさが出たもの。デッドなサウンドはこのようなドラマの劇版向きといえる。東京佼成ウィンド・オーケストラの名物シリーズ、「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」に近い音作りだ。マスタリングは名エンジニアの杉本一家氏が担当している。
エイベックス・クラシックスの目の付け所も素晴らしい、まさに企画勝ちといえるアルバムに仕上がった。今後もこのような企画アルバムは流行るだろう。


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