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トランペット協奏曲というと、まずハイドン(1732~1809)やフンメル(1778~1837)といった作曲家の名前が思い浮かぶが、個人的にお気に入りのトランペット協奏曲に、テレマン(1781~1867)の作品がある。有名なのは第2楽章のアレグロで、かつて小学校の鑑賞教材にも使われており、自分自身、親しんで聴いていたものだ。
しかし、最近のお気に入りは第1楽章。天上の響きともいうべき輝かしいパッセージは、この曲で使用されるピッコロ・トランペットの表現力ならではといえるだろう。それだけに奏者によって個性が出る曲でもあり、今回エントリーした6名のトランペット奏者による響きを録音順に改めて堪能してみたい。(ジャケット画像:左上より右回り)

■ルートヴィヒ・ギュトラー
マックス・ポンマー指揮 ニュー・バッハ・コレギウム・ムジクム・ライプツィヒ
(1980年、スタジオ ポール・ゲルハルト教会、ライプツィヒにて収録、CAPRICCIO海外盤)


今回のエントリーの中でのマイベスト盤。テレマンの求める要素を全て満たしているといっても過言ではない。何よりルートヴィヒ・ギュトラー(b.1943)の輝かしい音色。特に第1楽章の後半でクレッシェンドをかけながら高音に向かうパッセージは、まさに天上の響きそのものだ。第2・4楽章も含め、ギュトラーの卓越したフレージングには「歌」が息づいている。ニュー・バッハ・コレギウム合奏団については、また別途エントリーしたいが、バロック音楽の瑞々しさをうまく表現できる素晴らしいオケだ。

■ジョン・ウォーレス
ウィリアム・ボートン指揮 イングリッシュ・ストリング・オーケストラ
(1988年12月録音、バーミンガム大学グレイト・ホールにて収録、Nimbus Records海外盤)


フィルハーモニア管の元首席奏者、ジョン・ウォーレスによるもの。以前エントリーしたハイドンと異なり、大人しい印象のテレマン。理由は第1楽章。ピアニッシモで通した演奏の為、この曲に求めたい雄大さやスケール感が出ていないのが惜しかった。これもウォーレスのテレマンに対するアプローチなのだろう。

■ロルフ・スメドビィグ
ヤッハ・リン指揮スコットランド室内管弦楽団
(1989年7月録音、シティ・ホール、グラスゴーにて収録、TELARC海外盤)


エムパイア・ブラスのリーダーで元ボストン響のトランペット奏者だったロルフ・スメドビィグのソロアルバム収録曲。他のエントリー盤にはない装飾を加える等、やや演出過多な傾向にあるのはスメドビィグの個性といえるかもしれない。第1楽章は本エントリー盤の中では最も演奏時間が長い。テヌート気味で開始された第4楽章の冒頭が曲調に合っていないのが惜しかった。

■ミロスラフ・ケイマル
ヨゼフ・スーク指揮 スーク室内管弦楽団
(1991年録音、キララホール、秋川にて収録、キャニオンクラシックス国内盤)


チェコ・フィルの元首席奏者であるミロスラフ・ケイマル(b.1941)によるもの。実に伸びやかなテレマンで、気品さも充分。張りのある音色はケイマルならではといえるだろう。オケの一員としてだけでなく、ソリストとしても実に映える奏者である事を窺わせる。国内での収録だが、残響豊かな音響も美しい。ここで、バックの指揮を務めるヨゼフ・スークは今月、81歳でこの世を去った名ヴァイオリン奏者。以前、ドヴォルザークの「4つのロマンティックな小品」でもエントリーしただけに、この場を借りてご冥福を祈りたい。

■ハンス・ガンシュ
カメラ―タ・アカデミカ・ザルツブルグ
(1994年3月録音、モーツァルテウム・グローサー・ザール、ザルツブルクにて収録、ATEMMUSIK RECORDS海外盤)


ウィーン・フィル元首席奏者のハンス・ガンシュ(b.1953)によるもの。2009年に実演にも接している憧れの奏者だけに期待をしていたが、やや地味な印象を受けた。しかしながら、滑らかで、どこまでもストレートに伸びる音はガンシュならではで、第4楽章は爽快感に溢れている。バックのオケの響きが浅いのがやや残念。

■橋爪伴之
金洪才指揮  関西学院大学応援団総部吹奏楽部
(1995年9月16日録音、フェスティバルホール、大阪にて収録、JAPAN WORLD RECORD国内盤)


吹奏楽との共演盤という珍しいライヴ音源。トランペットは、近年、なにわ《オーケストラル》ウィンズにも出演している大阪フィルハーモニー交響楽団の橋爪伴之氏。ライヴならではのミストーンもあるものの、うまく吹き切っている。バックは吹奏楽コンクールでも常連のバンドだが、木管のアーティキュレーションが今一つ定まっておらず、吹奏楽ならではのメリットを享受できるに至っていないのが惜しい。