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「ソフトバンク」のCMや、「のだめカンタービレ」で効果的に使用されていたのがプロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」より「騎士達の踊り」(第1幕第2場の第13曲目の曲、組曲第2番の1「モンタギュー家とキャピュレット家」)だった。踊りでありながら、どこか深刻さを感じさせる旋律。深刻でありながら、どこかシニカルな要素も持ち合わせた、ユニークな曲だ。約70年前に作られたこの曲(1936年作)が、現代のCMやドラマにも映える情景を作り出したプロコフィエフの作曲センスにも脱帽してしまう。
今宵はオケ版2選にブラス版を加えた計3選を。

○ロリン・マゼール指揮 クリーヴランド管弦楽団(画像左上)
 ('73年6月録音、マソニック・オーディトリアム、クリーヴランドにて収録、
  デッカ輸入盤)


現状でのマイベスト盤。ドイツ・ロマン派を得意としていたジョージ・セル時代のクリーヴランド管弦楽団のサウンドカラーを、ロリン・マゼールが'72年の就任翌年の録音にして、見事に刷新してくれた名盤。ステレオ期の優秀録音に加え、抜粋版ではない全曲版での収録という所に、デッカ陣営のこだわりも感じる。マゼールとクリーヴランド管弦楽団の新生コンビの評価を早期に説いたいという狙いもあったのかもしれない。国内では当時のレコードアカデミー賞を受賞したアルバムだったと思う。
CD2枚組で全39曲からなるこの全曲版の収録曲は、どれも聴き馴染みのする親しみやすいもので、ロシア的な重々しさは微塵も感じられない。ここでの「騎士団の踊り」はやや早めのテンポで突き進む歯切れの良いストリングスセクションの旋律と、トロンボーンを中心とするブラスセクションの刻みがクールな雰囲気を生み出しており、爽快感をおぼえる。
プロコフィエフ自身、ロシアからアメリカへの亡命後、パリを中心に活躍していただけに、クールで洗練された作風がこの「ロメオとジュリエット」にも影響していると思われるが、それはマゼール&クリーヴランド管弦楽団のサウンドカラーにもぴったり。
セル時代に培われた透徹された緻密なアンサンブルは、そのままマゼール時代に受け継がれ、その後、ドホナーニの時代('84-'02)に至って更に進化したように思う。

○サー・ゲオルグ・ショルティ指揮 シカゴ交響楽団(画像右上)
 ('82年5月録音、オーケストラホール、シカゴにて収録、デッカ国内盤)


ショルティ&シカゴ響の黄金期のヴィルトォーゾ・サウンドを体感できる一枚。
名手揃いのシカゴ響にとってはぴったりなレパートリーだ。まるでバルトークの「管弦楽のための協奏曲」のような名人芸がここでも聴ける。「騎士団の踊り」はマゼール盤に比べるとややゆったり目だが、重戦車のように迫りくるサウンドはまるでショスタコーヴィッチの様だ。トランペット首席奏者のアドルフ・ハーセスの音もオーケストラサウンドにうまく溶け込んでいる(^^)
ここでは抜粋版(セレクション)による収録。全曲盤ではないのは残念だが、カップリングに交響曲第一番「古典」が収録されているのが嬉しい。デジタル期のデッカの優秀録音もこのシカゴ響サウンドを支えている。

○東京メトロポリタン・ブラス・クインテット(画像下)
 ('05年3月15・16日録音、フィリアホールにて収録、
  マイスターミュージック国内盤)


前回「アメリカンパトロール」で取り上げたアルバムがここでも登場。元々ブラスセクションが活躍する曲でもあるだけに、吹奏楽の世界ではコンクール等でよく取り上げられる。ここでは金管5重奏による編曲で、都響のブラスクインテットの名手5人が爽快な演奏を聴かせてくれる。