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ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のサウンドには人を惹き付ける何かがあるように思う。由緒ある伝統、アコースティックなコンセルトヘボウの響き、フィリップスのトーン…コンセルトヘボウ内部の模様はDVDでしか見た経験はないが、フィリップスのあのまろやかなサウンドはコンセルトヘボウの響きをよく捉えているに違いない。

そんなロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が奏でるバッハの名曲「G線上のアリア」はどんな響きなんだろう…?そんなきっかけで購入したアルバムがある。リッカルド・シャイーが指揮した一枚('00年9月6日録音、コンセルトへボウ大ホール、アムステルダムにて収録、デッカ輸入盤)だ。

通常のオケ編成ではストコフスキーによるトランスクリプションで演奏される機会が多いが、ここではマーラーによる編曲。「管弦楽組曲」の第2番と第3番からマーラー自身がセレクトした4曲がピックアップされており、英表記のタイトルは『バッハ組曲』となっている。というのも、ジャケットのビジュアルの通り、元々マーラーの「交響曲第3番」がメインの2枚組アルバム。シャイーのマーラーの交響曲全集が完成に至ろうとする時の録音で、どちらかといえばおまけ的にひっそりと?収められている。

しかしそこはさすがマーラー編曲のバッハ。第一曲(管弦楽組曲第2番~序曲)からパイプオルガンも加わっているのが特色だ。過度に壮麗さを意図しているのではなく、原曲の持ち味をうまく引き出すスパイス的役割となっている所にマーラーの手腕を感じる。マーラー自身、バッハが自分の時代に生きていたらこんなサウンドに仕上げただろう、という気持ちで着想したのかももしれない。
『バッハ組曲』の3曲目に位置する「G線上のアリア」(管弦楽組曲第3番~エア)は「交響曲第5番」第4楽章のアダージェットを連想させるものある。マーラーなりにこの組曲には愛着があったに違いない。
この曲は1909年、マーラー(当時49歳)がニューヨーク・フィルの指揮者に就任した頃にカーネギーホールで初演されたという。
余談だが、4曲目に位置する「管弦楽組曲第3番~ガヴォット1&2」のメロディーは以前から「まっかだな~」と聞こえてしまう・・・こんな空耳は自分だけだろうか?(^^;

個人的にはストコフスキー版の濃厚な「G線上のアリア」も好きだが、素材の持ち味をそのまま引き出したマーラー版がとても好きになった。シャイーの指示なのか、マーラーの指示なのか、ピリオド・アプローチに近い演奏スタイルにも好感がもてる。録音もフィリップスとは違うデッカの洗練された録音で、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のストリングスセクションと共に堪能できる一枚となった。

メインのマーラーの「交響曲第3番」は別の機会に改めてエントリーしたいが、トランペット奏者泣かせの3楽章の有名なポストホルンパートは秀逸。その滑らかで幻想的な響きをデッカが実によく捉えている。コンセルトヘボウの首席フリッツ・ダムロウか、ピーター・マセウスの音だろう。ソロのクレジット表記がないのが惜しい。