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「トッカータとフーガ」ニ短調BWV525。バッハの代表作であり、パイプ・オルガンの名曲でもあるが、ブラスの世界でも数多くアレンジされて演奏されている。今回、後程エントリーする日本の金管五重奏団によってレコーディングされたアルバムがリリースされたのを機に、こだクラ(蔵)から計4つのディスクを取り出して改めて聴き比べしてみたい。他にも吹奏楽版や、ブラス・アンサンブル版が存在するが、5本の金管がどれ位重厚なオルガンサウンドに近付けるかがポイントといえるだろう。(ジャケット画像:左上より時計回り)

○カナディアン・ブラス
 (①1978年頃録音、OMEGA海外盤)(②1980年頃録音、RCA海外盤)


カナディアン・ブラスによる「トッカータとフーガ」は2種類を所有。編曲はいずれもカナディアン・ブラスのトランペット奏者のフレデリック・ミルズ。OMEGA盤はジャケット画像のようなスタジオ収録の為か、ややオンマイク気味の録音だが、彼らがデビュー当初から評価が高かった事を窺わせる演奏。カナディアン・ブラス・トーンともいえる柔らかい音色が特長。
一方のRCA盤はOMEGA盤から後年のレコーディングで、ステレオ感いっぱいに広がる録音。やや遅めの冒頭でスタートするが、途中の技巧的なパッセージも軽々と聴かせてしまう。音の粒が揃っており、室内楽的な愉悦感に浸らせてくれる演奏。OMEGA盤同様、柔らかい音色は、パイプオルガンの重厚感とはまた異なるかもしれない。

○イングリッシュ・ブラス・アンサンブル 
 (1990年11月録音、ASV海外盤)


アルバム「トッカータ」に収録。トランペットのポール・アーチボルトは・フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル(PJBE)の元メンバーとしても有名。本アルバムの編曲も担当。さすが、フィリップ・ジョーンズの系統を受け継いでいるというべきか、英国ブラスの息遣いが聴こえる演奏。五本の管楽器が見事に溶け合い、一つに融合している。「トッカータとフーガ」は、PJBEの日本公演アルバムにもブラス・アンサンブル版で収録(アーチボルトもメンバーとして参加)されていたのを思い出した。

○Buzz Five(バズ・ファイブ)
 (2013年1月録音、ふくやま芸術文化ホールにて収録、ワコーレコード国内盤)


最近リリースされたアルバム「Buzz plays Bach」に収録。Buzz Fiveは東京芸大の同期により結成された金管五十奏団。第一トランペット奏者の上田 仁氏は東京シティ・フィルの首席奏者で、ソロにアンサンブルにと、マルチに活躍している。演奏は多少粗削りな部分はあるも、各プレーヤーの持ち技が発揮され、シンフォニックなハーモニーを堪能できる。録音は4枚の中で最も優秀。音に自然な拡がりが感じられる。