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今回も廃盤CD、というより廃盤レーベルとの幸運な巡り合わせがあった。ホルン奏者、バリー・タックウェルによるモーツァルトのホルン協奏曲。90年、アビーロードスタジオでの録音で、原盤はCollins。CollinsレーベルはCHANDOSと同じイギリスのレーベルで、自国の演奏家や演奏団体をフィーチャーした名門レーベルだった。ところが詳しい理由は分からないが、90年代後半位だろうか、レーベル自体が消滅してしまった。おそらく資本が変わったか、解散の危機に追い込まれたのだろう。

レーベル自体はなくなっても、名演奏・名録音はたくさん残されており、イギリスのオケが好きな自分にとっては、是非とも復活してほしいレーベルだ。その録音の一つが上記の演奏によるアルバムだった。日本ではある時、新星堂が廉価盤として取り扱いをしていた。

演奏はフィルハーモア管弦楽団。この時期の英語表記はTHE PHILHARMONIAとなっており、これはCHANDOSとも共通している。このホルン協奏曲は金管セクションの入らないストリングス主体の曲だが、フィルハーモニア管の流麗なストリングスを堪能できる。

そして何より、タックウェルの卓越したホルンテクニック。まさにホルン吹きに相応しい柔軟性と、豪快さを兼ね備えている。繊細なピアニッシモから野太いフォルテまで難なくこなしていく。
何より音が割れずにあくまでホルンの品位を保っている所も素晴らしい。このホルン協奏曲は1~4番まであるのだが、このアルバムでは「0番」(習作?)も収められており、希少価値もありそうだ。彼はこの録音の前後にもイギリス室内管弦楽団と一緒にDECCAレーベルで録音しているが、Collins録音の良さとフィルハーモニア管の美しさも手伝ってか、個人的にはこちらをベストにあげたい。

ちなみにタックウェルは指揮も兼ねて吹いている。「弾き振り」ならぬ「吹き振り」なのか?実際、ロンドン交響楽団を指揮したドボルザークの新世界の録音等もあり、指揮者としても活躍している。このアルバムは自分が中学生か高校生の頃、父親がイギリス出張のお土産で買ってくれたクラシックCDだったという思い出もあり、今もって懐かしい。そう、タックウェルは元ロンドン響のホルン奏者だったのだ。