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梅雨も明け、いよいよ本格的な夏が到来。これだけ暑いと、少しは納涼を感じさせる曲を聴きたくなる。今も現役のフュージョンバンド、「T‐スクエア」が生み出した名曲、「オーメンズ・オブ・ラブ」はそんな一曲。'85年に発表されたオリジナル・アルバム「R・E・S・O・R・T」の中の収録曲だが、20年以上たった今でも、T‐スクエアを代表する一曲となっている。つい最近も、作曲者の和泉宏隆氏自身が演奏したピアノトリオ版がリリースされたばかり。8ビートのリズムとキャッチーな旋律で印象的なこの曲は、翌'86年に、吹奏楽版が出版された事をきっかけに、20年以上たった今でも、多くの吹奏楽団体によって愛奏されている。
今回は'97年録音から最新の'08年録音まで、3つの吹奏楽団による「オーメンズ・オブ・ラブ」をエントリー。録音順に、この名曲に改めて浸ってみたい。(ジャケット画像:左上より右回り)

○岩井直溥指揮 東京佼成ウィンド・オーケストラ
 ('97年3月録音、東芝EMI国内盤)


まずは、吹奏楽版が出るきっかけとなった「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」のアルバムから。ここでの吹奏楽版「オーメンズ・オブ・ラブ」は、前回「宝島」でエントリーしたディスクと同じ、発売25周年の記念アルバムのもの。音源もリニューアルされており、スタジオ録音ならではの安定したサウンドバランスに仕上がっている。もちろん、指揮は「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」シリーズの生みの親、岩井直溥(b.1923)の指揮によるもので、当時すでに74才ながら、東京佼成ウィンド・オケと共に、パワフルでダイナミックな演奏を聴かせてくれる。
まずはスタンダードな演奏といえるだろう。

○牧野耕也指揮 なにわ《オーケストラル》ウィンズ
 ('05年5月4日録音、ザ・シンフォニーホールにて収録、BRAIN MUSIC国内盤)


大阪のザ・シンフォニーホールでのライブ録音。アンコールで演奏されているだけに、演奏者も実にリラックスしたムードなのだろう、ノリノリな演奏!ここではお客の手拍子も加わっているため、ドラムのリズムにも勢いがあって、心地よい爽快感を感じさせ、会場の盛り上がりが伝わってくるようだ。ライヴで演奏された「オーメンズ・オブ・ラブ」としてはベスト盤といえるだろう。

なにわ《オーケストラル》ウィンズは実にユニークだ団体で、その名の通り、関西一円のオーケストラ奏者中心(一部首都圏のオケのメンバーも含まれる)によるウィンド・オーケストラ。大阪フィルのクラリネット奏者、金井信之氏が中心となり2003年に結成されたという。
普段はクラシックを中心に演奏している演奏家達が、吹奏楽サウンドに挑戦したらどうなるか?といういわば実験的な要素も感じられる。日々クラシック作品をこなしているだけに、ハーモニー感覚はもちろんの事、吹奏楽特有のリズム感覚にもたけていることを実証させてくれる。彼らも、もとは吹奏楽少年・少女だったのだから、当然かもしれない。メンバーの中には、中学や高校での現役時代に、実際にこの曲を演奏したオーケストラ奏者もいるに違いない。
毎年行われるコンサートでは、毎回、中学・高校の吹奏楽部のカリスマ指揮者を客演指揮者として迎えている点もユニーク。特に淀川工業高校吹奏楽部顧問の丸谷明夫氏は毎年客演指揮者として迎えられているのも人気のようだ。コンサートでは現役の部員の動員が多く駆け付けているに違いない。ちなみに、これはアンコール1曲目に演奏されているが、2曲目は、あの紅白でも一躍有名になった「マツケンサンバⅡ」!このノリの良さは、この団体が「なにわ」発である事にも関係しているのだろう。いかにノリノリ演奏かは、聴いてのお楽しみ!

○渡辺秀之指揮 宝塚市吹奏楽団
 ('08年2月録音、ユーベルホールにて収録、CAFUA国内盤)


最近出会った吹奏楽版「オーメンズ・オブ・ラブ」が収録された最新ディスク。'08年現在でも、この曲がいかに吹奏楽で愛奏されているかが窺われる。この名曲が過去を懐かしむものでなく、現在進行形の今を楽しむ曲である事を改めて再認識させてくれる。
宝塚市吹奏楽団は'79年に結成された市民吹奏楽団で、この10年に全国大会にも3回出場している。アマチュアがコンサートで演奏する「オーメンズ・オブ・ラブ」としては高レベルな演奏。ここでもディスクの最終2曲の内の一曲として収録されており、アンコールで演奏されていることを想定してのものだろう。
CAFUAの一連のアマチュア団体によるCDシリーズは、毎回臨場感の高い録音で、ダイナミックレンジの広さも売りの一つとなっている。高品位なレコーディングも、アマチュア団体の演奏意欲をかき立てる大きなポイントの一つなのだろう。