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猛暑が続く7月の最中、7月8日に札幌出張の機会があり、タイミングよく、仕事の後に今年で29回目となるPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)の野外コンサート(PMF大通公園コンサート)を聴くことができた。このコンサート、出演メンバーがすごかった!ウィーン・フィル、ベルリン・フィルのメンバーが「PMFウィーン」、「PMFベルリン」としてそれぞれ参加、それに世界から集まったPMFの若手メンバーが出演する豪華陣営。札幌の中心部に位置した大通公園の一角のステージの為、いずれも室内楽編成だが、それでも実に充実した内容だった。周辺には車道があり、演奏音自体はPAで少し拡声されていたものの、10列目位の前方で聴く事ができたおかげもあり、鑑賞上の問題はなかった。演奏曲は以下の通り。

<PMFウィーン>
○モーツァルト:弦楽四重奏曲 第19番 ハ長調 K. 465 「不協和音」
  演奏:ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン)、ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン)
      ハインツ・コル(ヴィオラ)、エディソン・パシュコ(チェロ)
 
<ホルン・アンサンブル>
○ウェーバー:『魔弾の射手』から「狩人の合唱」
○ビートルズ:イエスタデイ
  演奏:PMFベルリン:サラ・ウィリス(ホルン)&PMFオーケストラ・メンバー
   
<PMFブラス・アンサンブル>
○ゴフ・リチャーズ:高貴なる葡萄を讃えて
  シャンペン/シャブリ/フンダドーレ-そしてシャンペンをもう1本
  演奏:PMFベルリン:タマーシュ・ヴェレンツェイ(トランペット)
               イェスパー・ブスク・ソレンセン(トロンボーン)
      PMFオーケストラ・メンバー
  
<PMFベルリン>
○バーンスタイン(プライス編):「ウエストサイド・ストーリー組曲」から
  アイ・フィール・プリティ/トゥナイト/マリア/アメリカ
  演奏:アンドレアス・ブラウ(フルート)、ジョナサン・ケリー(オーボエ)
  アレクサンダー・バーダー(クラリネット)、シュテファン・シュヴァイゲルト(ファゴット)、サラ・ウィリス(ホルン)

 
まずは1曲目からウィーン・フィルの元コンサートマスター、ライナー・キュッヒルの姿が。ウィーン・フィルを2016年に定年退職しているが、定年後も指導者・ソリストとして健在ぶりを垣間見れたのは良かった。

個人的な見どころはブラスステージ。最初のホルン・アンサンブルは2001年よりベルリン・フィルに在籍しているブラスセクション初の女性メンバーである、サラ・ウィリスが実にエネルギュ。彼女は演奏はもちろんのこと、MCでも達者な日本語で会場を沸かしてくれ、パフォーマンスが実に豊か。演奏中、カラスが演奏に呼応して鳴き始めるという野外コンサートならではのハプニング(?)もあったが、彼女はそれも味方につけて演奏していた。笑顔もとても素敵で、親近感がわく。ベルリン・フィルでもきっと良きムード・メーカーに違いない。

そしていよいよ注目のブラスアンサンブル。映像でよく姿を観ていた2000年よりベルリン・フィルの首席を務めるタマーシュ・ヴェレンツェイに個人的に注目。彼らの演奏曲は元々ロンドン・ブラスの十八番のレパートリー。さすがにアンサンブルとしての巧さは本家ロンドン・ブラスが上だが、来日からあまり日数がなかったと思われる中で、PMFの若手メンバーとうまくまとまった演奏を聴かせてくれた。ちなみに、ここでサラ・ウィリスは、演奏者としてでなく、葡萄酒のコルク抜き係として参加!ここでも彼女のパフォーマンスが会場を沸かせてくれた。

この日の白眉はそんなサラ・ウィリスとベルリン・フィルのメンバーによるバーンスタインの名曲、「ウェスト・サイド・ストーリー組曲」より。クラリネット、オーボエ、ファゴット、フルート、ホルンによる五重奏という珍しい編成。ここでのサラ・ウィリスの音には全体をリードするような存在感があり、ソロも光っていた。

このPMFも来年で30年目を迎える歴史ある音楽祭に成長している。生きていれば今年で100歳になるPMF創設者のレナード・バーンスタインも天国で喜んでいることだろう。
客層は全体的に年配が多かったが、外国人のファミリー層もいるあたりが、このような音楽祭ならでは。
17時から開演という時間帯もあるが、そこは北海道ならではで、外でも暑くなくさらっとした空気が心地良い。演奏と共に少しずつ日差しが落ちていく雰囲気もよく、まるでヨーロッパの土地に居合わせたような、そんな至福のひと時だった。
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