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英国オケの第2番といえば以前、ヴァーツラフ・ノイマン&フィルハーモニア管弦楽団の渋みある名演をエントリーしたが、今宵はスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮 ハレ管弦楽団の演奏で。
ブラームスの第2番(実際には2番の3楽章)を自分が初めて聴いたのは、彼らの演奏を通じてだった。中学か高校時代、父が海外出張先のロンドンで土産に買ってきてくれたクラシックのサンプラーCDの中にその演奏は収められていた。レーベルは既にウィン・モリス&ロンドン交響楽団の「田園」でエントリーしたIMPクラシックス。そのアルバムに収められていたのがブラームスの第2番の第3楽章。さすがサンプラーCDだけあって、初めて聴いても親しみやすい曲が中心に収められており、オーボエのソロで開始されるブラームスの交響曲第2番の3楽章にも親しみを感じたものだ。

そんな自分にとって懐かしの演奏を最近全集で購入、改めて第2番(1987年11月録音、フリー・トレード・ホール、マンチェスターにて収録、IMPクラシックス)を通して聴いてみる。

スクロヴァチェフスキのオーケストラビルダーとしての手腕を感じる一枚。録音当時64歳のスクロヴァチェフスキは1984年より1991年まで8年間、ハレ管の首席指揮者に就任しており、既にこのオケを思う存分ドライヴさせているのが伺える。
ハレ管弦楽団は英国北西部の代表的な工業都市、マンチェスターにあるオケだが、ロンドンに次ぐ大都市であるバーミンガムに所在するバーミンガム市交響楽団と比べると知名度では劣るかもしれない。もっとも、バーミンガム市交響楽団はベルリン・フィルのシェフに就任したサイモン・ラトルの力による所が多いが・・・(^^;

ハレ管弦楽団、といえば思い出すのが、1943~1958年の15年に渡って指揮を務めた名指揮者、ジョン・バルビローリ。英国の中で伝統あるオケではあるものの、一時は低迷しかけたこのオケを知名度・実力共に引き上げたのがバルビローリで、その実績はEMIに残された数々の名盤に残されている。
自分なりの思い出としては、高校時代に選択教科の音楽の時間でナガサワ先生がバルビローリ&ハレ管弦楽団のエルガー:「威風堂々」やディーリアスの曲を鑑賞で聴かせてくれたのが懐かしい。バルビローリもまさしくオーケストラビルダーだった。

スクロヴァチェフスキもメジャーではないオケのポストを歴任しながら名演を残している。最近ではザールブリュッケン放送交響楽団を降ったブルックナーの交響曲全集がそうだった。
そんな彼のオーケストラビルダーぶりはN響アワーで見かけるエネルギッシュな指揮ぶりからも伺える。高齢にも関わらず日本のオケの客演指揮が多く、今年4月より読売日本交響楽団の常任指揮者に就任。朝比奈隆ギュンター・ヴァント亡き後、ブルックナー指揮者として日本の聴衆からは見られている向きもあるが、このブラームスを聴いていると、それは彼の一側面の姿でしかないようだ。

ここで聴くブラームス第2番は至って誠実な演奏。スクロヴァチェフスキはマリン・オールソップのように、オケから美音を引き出すというタイプの指揮者ではないかもしれない。どこか無骨さが残るようにも感じるが、ハレ管からブラームスに求められるサウンドを十二分に引き出している。「田園交響曲」とも呼ばれる曲のカラーがハレ管のサウンドにもマッチしている。

最近のハレ管は自主レーベルを立ち上げる等、個性ある活動を行っているようだ。日本と同じく、英国の一地方都市のオケとして個性を発揮する時代になってきている。