画像

2009年3月8日(日)。この日は自分の人生の中でも忘れられない日となった。大学時代に歌って以来、約13年ぶりとなる合唱のステージ。しかも今回は、合唱だけでなく、海外から招いたマエストロを始め、プロの独唱者、オーケストラとの共演となる。昨年8月に社会人アマチュア合唱団に入団してから、あっという間の約8か月だった。
今回、「ヨハネ受難曲」を歌う事で、改めてバッハ作品に深みを感じるようになったし、クラシック音楽の原点に改めて触れたような感じがする。演奏者の一人としてチャンスに恵まれた事に感謝したい。本番の共演の方々は以下の通り。

客演指揮:ユルゲン・ヘンシェン
ソプラノ:須崎 由紀子
アルト:城守 香
テノール:ダンテス・ディヴィアク
バリトン:小松 英典
バス:菅井 寛太
合唱:東京ハウプトコーア
管弦楽:アンサンブル of トウキョウ


本番でタクトを振るマエストロ、ヘンシェン氏(b.1948)による練習が始まった3月4日から本番までの貴重な5日間をドキュメンタリー風に綴ってみた。

【3月4日:指揮者リハーサル初日/会場:四谷】
いよいよヘンシェン先生による指揮者練習が始まる。熱く、エネルギッシュな指揮ぶりにまず圧倒される。テンポのゆらし方、アクセントのつけ方も自由自在。「バッハはベートーヴェンやブラームスと違って、指示記号が少ない。もっと自由に、即興的に歌っていい」という的確で説得力のあるコメントに、バッハ音楽の本場、ドイツの教会の音楽監督兼オルガン奏者として長年活躍してきたキャリアを感じるものがある。
指揮一つで劇的に演奏が変わるのは、以前、北村先生の指揮で歌った時も、同じような経験をしたものだった。最終曲のコラール、こんなにも有機的で感動的な曲に生まれかわるとは!当日は歌いながら涙腺がゆるまないように気をつけねば!(^^;

【3月5日:指揮者リハーサル2日目/会場:新大久保】
今日もマエストロ・ヘンシェンのエネルギッシュさに圧倒される。ヘンシェン先生のお話で印象に残るエピソードがあった。バッハ演奏の大家、カール・リヒターが録音したヨハネ受難曲のアリア「Eilt, ihr angefochtnen Seelen」(BWV48)での合唱の「wohin」は子音の「n」を伸ばす事で、まるで教会にいるかのような残響効果を生みだしたという。
マエストロ・ヘンシェンはハンス・マルティン・シュナイト(b.1930)に師事しているが、そのシュナイトは、カール・リヒター(1926‐1981)が創設したミュンヘン・バッハ管弦楽団を、リヒターの後任として1984年以降、約20年に渡って率いてきた。すなわち、マエストロ・ヘンシェンはカール・リヒターの伝統を受け継いでいるといえるだろう。メリハリのある指揮はリヒター譲りなのかもしれない。リハーサルの場で、バッハの大家、リヒターのエピソードを聞けるなんて!どんな演奏になるのか、今から楽しみだ。

【3月6日:指揮者リハーサル3日目/会場:新宿】
この日は朝5時半起床の出張帰りで予定より遅れながらも会場に向かう。新宿駅から15分程の徒歩の会場に加え、会社PCと重いバッハの楽譜を携えながらの出張で、連続3日目の会社帰りの練習という事もあり、疲れの出る一日となった。他のメンバーもこの日は集まりが良くなかった。しかしながら、彼の指揮で歌うと不思議と疲れも吹っ飛び、パワーがみなぎってくる。

【3月7日:オーケストラリハーサル本番前日/会場:駒込・滝野川会館ホール】
いよいよオケ合わせ。ここ直近の疲れが出たのだろうか、体調がおもわしくなく、栄養ドリンクを飲んで何とかリハーサルを乗り切った。練習後はすぐさま帰途につく。明日はいよいよ本番、今日は早めに休もう。(その②へ続く)