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ディズニーランドやディズニーシーに行くと、園内がディズニー音楽で満たされ、至福なひと時を覚えるが、個人的にさすがディズニー、と感じるのは、その音楽がほとんど、アコースティックなサウンドで占められていること。もちろん、エレクトリカル・パレードのような例外もあるが、音楽の世界においてもデジタルサウンドが普及している昨今、本物の楽器で奏でられることの良さや、本物の楽器で聴けることの良さというものをディズニーは教えてくれる。
今回は、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の奏者達が奏でるディズニー音楽、という、実にレアで貴重なアルバムを。ウィーン・フィルでは普段多くのメンバーが弦楽四重奏や木管五重奏などを組み、オケとしての活動以外に室内楽も様々に繰り広げられ、多くのレコーディングが残されているが、そんな中で「ディズニー・ミニ・オーケストラ」(1992年10月録音、カジノ・にて収録、ポニーキャニオン、国内盤)と題されたディズニー珠玉の名曲20曲が2枚のアルバムに収められた音源が存在する。
演奏は「ウィーン・ヴィルトゥーゼン」(画像下)という、首席クラリネット奏者のエルンスト・オッテンザマー(b.1955)によって結成された団体で、コンサートマスターのライナー・ホーネック(b.1961)や、ホルンのフォルカー・アルトマン(b.1943)など、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。ユニークなのは、この団体が弦楽四重奏+コントラバスに木管五重奏(フルート・オーボエ・クラリネット・ファゴット・ホルン)を加えた10人編成であるという点。弦楽器・木管楽器・金管楽器という編成は、まさにアルバムタイトルの「ミニ・オーケストラ」にふさわしく、ウィーン・フィルの小編成版といっても過言ではないだろう。

収録曲は以下の通り。
■「ディズニー・ミニ・オーケストラ vol.1」(画像上、左側のジャケット)
1. 「不思議の国のアリス」~不思議の国のアリス
2. 「シンデレラ」~夢はひそかに
3. 「ピノキオ」~星に願いを
4. 「三匹の子ぶた」~狼なんかこわくない
5. 「美女と野獣」~美女と野獣
6. ミッキーマウス・マーチ
7. 「バンビ」~4月の雨
8. 「白雪姫」~ハイ・ホー
9. 「ピートとドラゴン」~それはむずかしい
10. 「メリー・ポピンズ」~スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス

■「ディズニー・ミニ・オーケストラ vol.2」(画像上、右側のジャケット)
1.「わんわん物語」~ララルー
2.「メリー・ポピンズ」~チム・チム・チェリー
3.「ピーターパン」~右から2番目の星
4.小さな世界
5.「白雪姫」~いつか王子様が
6.「リトル・マーメイド」~パート・オブ・ユア・ワールド
7.「眠れる森の美女」~いつか夢で
8.「くまのプーさん」~くまのプーさん
9.「南部の唄」~ジッパ・ディー・ドゥー・ダー
10.「ダンボ」~ケイシー・ジュニア

これまでも、こだクラで、室内楽や、オケ編成によるディズニーアルバムを取り上げてきたが、アコースティック楽器でディズニー音楽を聴きたい方には必聴のアルバム。ディズニー音楽が、ウィーン・フィル奏者の手にかかると、まさにウィンナ・スタイルの音楽となっているのに驚かされる。テンポのゆらしかた、音の合わせ方、各楽器のソロの奏で方などはまさにウィンナ・トーンそのもの!お互いの奏者同士の親密な空気感がアンサンブルにも見事に反映されており、ディズニー音楽を心から楽しでいる様子が窺われる。「ララルー」や、「右から2番目の星」「くまのプーさん」等々、聴いているだけで癒しの世界に浸っていられる。

もう一点、素晴らしいのは本アルバムのアレンジ。その曲が持つ魅力が各奏者の美音と共に最大限に引き出されているのが嬉しい。「林 千尋」という編曲者の名前がクレジットされているが、おそらく、本アルバムは日本企画のアルバムなのだろう。アレンジジャーの手腕によるところも大きい。

惜しいのは、ウィーン・フィルのメンバーが演奏したディズニー・アルバムにも関わらず、その存在があまり知られていない点で、1998年に発売されたものの、今では廃盤となっていることだ。自分のようにクラシックスタイルでディズニー音楽を楽しみたい層は多いはずで、この貴重な音源を一人でも多くの方に聴いてほしく、是非復刻を望みたいものだ。こだクラ流 ディスク世界遺産として広く推薦したい。

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