「Sir Georg Solti Conducts The Chicago Symphony Orchestra」(Sony Classical海外盤)と題するDVD3枚組のBOXセットがサー・ゲオルグ・ショルティの生誕100周年(1912-1997)を記念して発売された。かつてレーザーディスクで発売されたコンテンツのようだが、自分にとっては黄金期のショルティ&シカゴ響を追体験できるまたとない機会でもあり即購入。内容は1986年の2回目と1990年の3回目の来日公演のライブ映像。会場は東京文化会館とサントリーホールの2会場での収録だが、当時の聴衆の熱狂ぶりが伝わってくる。
本来であれば、自分も1997年のプロムスにおいてショルティの指揮姿に接する可能性があったのだが、直前に死去し、当夜の公演がサー・コリン・デイヴィスの代演になった事が今でも思い出される。収録曲は以下の通り。
■Disc1
モーツァルト:交響曲第35番ニ長調K.385『ハフナー』
マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調
(1986年3月26日録音、東京文化会館にて収録)
■Disc2
ショルティのピアノ演奏を交えた『展覧会の絵』の楽曲解説とリハーサル映像
ムソルグスキー(ラヴェル編):組曲『展覧会の絵』*
(1990年4月15日録音、サントリーホールにて収録)
■Disc3
ベートーヴェン:『エグモント』序曲
ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調Op.67『運命』
ベルリオーズ:『ファウストの劫罰』より「ラコッツィ行進曲」』(アンコール)
(1990年4月15日録音、サントリーホールにて収録)
サー・ゲオルク・ショルティ指揮
シカゴ交響楽団
ショルティのアグレッシブな指揮姿(例えは悪いが、その指揮ぶりはまるでカマキリのよう!)を拝めるのも嬉しいが、個人的な関心は、やはり現役時代のアドルフ・ハーセス(b.1921)の姿を見られた事だった。1986年の来日時は64歳、1990年の来日時は68歳。しかも、演目が「展覧会の絵」やマーラーの「交響曲第5番」ときたら、まさに彼の独壇上というしかない。特に、「展覧会の絵」では「プロムナード」のソロから、終曲に至るまでまさにハ―セスのオン・ステージともでいえるもので、特に「キエフの大門」では、顔を紅潮させて吹く姿が印象的だった。金管軍団の放つスパークにサントリーホールの聴衆も圧倒されたに違いない事が、終演と同時にこだまするブラヴォーを聴いて容易に想像できる。一方、マーラーの5番も1楽章から彼の勇姿をカメラは捉えているのだが、終楽章は、ショルティの指揮姿をカメラが追いかけており、ハーセスの姿がほとんど捉えられていないのが唯一残念。
映像にはマーラーでハ―セスと共に見事なソロを聴かせるホルンの名奏者デイル・クレヴェンジャーや2010年のシカゴ響ブラス・クインテットの来日メンバーでもあるマイケル・マルケイ(トロンボーン)やジーン・ポコーニー(チューバ)の姿も見られるのが嬉しい。なお、1986年の来日映像にはポコーニーの前任であるアーノルド・ジェイコブスの姿も。金管セクション以外ではオーボエの重鎮、レイ・スティル(b.1920)もいる。
金管や木管奏者だけではない。モーツァルトでは、ストリングスの分厚い響きと精度の高いアンサンブルも堪能できる。全体的な奏者の年齢層は高めだが、名門の響きというのはこういうものか、という事がショルティの自信に満ち溢れた表情からも窺い知れる。
一時代を築き上げたショルティ&シカゴ響のまさに貴重なドキュメントだ。
【過去にエントリーしたショルティ関連のブログ】
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