山下達郎のニューシングル『ずっと一緒さ』が3月12日に発売された。シングル発売は実に2年5ヶ月ぶりという事もあって、ファンの一人として感激もひとしお。店頭で予約したCDを受け取るまでは、予定通り発売されるのか?と落ち着かなかったが、ipodにも取り込み、早速ヘビーローテーション状態に。
今回も詞・歌だけでなく、レコーディングからマスタリングまで達郎の一貫したこだわりが感じさせる仕上がり。特に達郎の「音圧」へのこだわりは今回も徹底しており、実に高品位な音を聴かせてくれる。ここまで音への飽くなき追求を続けるアーティストはJ-POP界でどれだけいるのだろう。まさに「職人」=「アルチザン」な達郎の一面を見る会心の作だ。
[収録曲]
1. ずっと一緒さ
2. バラ色の人生~ラヴィアンローズ
3. ANGEL OF THE LIGHT(Single Version)
4. ずっと一緒さ(オリジナルカラオケ)
5. バラ色の人生~ラヴィアンローズ(オリジナルカラオケ)
1.ずっと一緒さ
1/14にスタートしたフジテレビ系月9ドラマ、「薔薇のない花屋」(出演: 香取慎吾、竹内結子他)の主題歌。 普段はめったにドラマは観ない自分も、この曲がドラマに使用されているのを知って以来、エンディング部分を何度か観た。主にドラマ脚本からイメージを膨らませて作った曲だというが、詞・歌共に、職業作家としての手腕を発揮した極上のバラード曲となっている。語句が多くないのが達郎の歌詞の特徴でもあるが、その一言一言に余韻があり、聴き手に想像を膨らませてくれる。
ところで、最近の彼のラヴソングには「しじま」という言葉がよく使われている。2005年公開の映画『東京タワー』のテーマソング、「FOREVER MINE」の歌詞にも使用されていたのが記憶に新しい。「しじま」とは、「静まりかえって、物音一つしない世界」のこと。音としても印象的に響くこの言葉を、達郎自身、大切にしているのが窺われる。
なお、彼のアルバムで過去何度も共演している服部克久氏のストリングスアレンジもいつもながらに素晴らしい。(ちなみに「FOREVER MINE」でも担当していた)
2. バラ色の人生~ラヴィアンローズ
後半2曲は英語曲。「バラ色の人生~ラヴィアンローズ」は、 TBS系列「ブロードキャスター」のオープニング&エンディングテーマとして現在オンエア中。フランスのシャンソン歌手、エディット・ピアフの1944年の代表曲で、「愛の讃歌」と並ぶ名曲として知られる。この曲を達郎が得意とするドゥー・ワップ調の一人多重アカペラとしてカバーしており、そのテイストに自分自身もブロードキャスターを見る度、気になっていた曲だった。
驚いたのはこの曲の中間部で流れる口笛。口笛を吹いているのは何とトランペット奏者の数原晋氏!数原晋氏といえば、自分の中では上記の服部克久氏がライフワークとする、「音楽畑」シリーズの中の「ジプシーローズ」で見事なソロを聴かせてくれた名トランペット奏者というイメージの強いベテラン・ミュージシャンだ。過去、達郎のアルバムで何度も共演を重ねてきているが、おそらく今回の特別(?)出演は達郎側からのリクエストだったのかもしれない。口笛でも見事なソロを聴かせてくれる事を証明してくれた。でも自分だったらもっといいソロを聴かせられたかも(^^)
今回のシングルにはカラオケ版を除くと3曲になるので、2曲目は小休止的な位置づけだろうが、実際、達郎のライヴではアカペラコーナーもあるので、達郎ならではの粋な計らいと感じた。
3. ANGEL OF THE LIGHT(Single Version)
現在、NikonのCMでオンエア中の曲。「光」をテーマにNikonのコーポレートカラーである黄色と黒を取り込んだ印象的な映像に、達郎の英語詞が付いた企業CMで、「ずっと一緒さ」と並び感動的でスケールの大きな曲として気になっていたもの。今回のシングル発売に合わせて収録されたのが嬉しい。
詞は長年の英語詞のパートナーであるアラン・オディとの共作だが、改めて達郎の英語歌唱のレベルの高さを窺わせる。オディとはインターネット上のデータのやりとりで曲作りをすすめていたようで、曲作りの世界においてもデジタルな世の中になったものだ。
サビ部分の多重コーラスワークで展開する曲調は、以前、NTTコミュニケーションズのCMで使用されていた「LOVE CAN GO THE DISTANCE」と似ている。
なお、このアルバムの特典にはミニアコースティックライブ抽選招待応募ハガキが付いており、久々のシングル発売でプロモーションへの意気込みも感じられた。残業が続く今日この頃、久々に達郎の歌声でパワーをもらえる週末となった。