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3月といえば卒業シーズン。去年は佐渡裕&シエナ・ウィンド・オケによる卒業シーズンにぴったりなアルバムをエントリーしたが、今回は、センチメンタルな気持ちにさせてくれるディズニーの名曲、フランク・チャーチル作曲の「いつか王子様が」(英題:Someday My Prince Will Come)を。現在、東京ディズニーリゾートのCM(「お泊りディズニー」)のBGMでも流れている。個人的にもお気に入りのディズニー曲の一つだが、敬愛するジャズ・ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニ(1962-1999)の演奏による2種類のディスクをエントリーしたい。いずれもデュオによるものだが、自分の中ではマイベスト盤となる「いつか王子様が」のディスクも含まれている。ペトルチアーニの名盤を聴きながら、ジャズの世界に浸ってみたい。

■ピアノ&ベースデュオ
 ミシェル・ペトルチアーニ(ピアノ)
 ニールス・ペデルセン(ベース)
 (1994年4月18日録音、コペンハーゲン・ジャズハウス、デンマークにて収録、DREYFUS JAZZ国内盤)


アルバム「ミシェル・ペトルチアーニ 未発表ライヴ・ボックス」(英題:「CONCEERTS INEDITS」、ジャケット画像:右上)に収録。ピアノ&ベースによるデュオといえば、以前、クリスチャン・ジェイコブ&テリエ・ゲヴェルトでもエントリーしており、シンプルな編成が個人的にもお気に入り。
これぞ究極のデュオ、と呼びたくなる演奏で、ペトルチアーニ(当時32歳)とペデルセン(画像:左上)の絶妙な掛け合いが繰り広げられた歴史的名演だと思う。冒頭、別々に奏で始めたかのように聴こえるピアノとベースだが、徐々に歩み寄り、やがて複雑なテンションコードを形成しながらリズムを刻み、極上のグルーヴを生み出してゆく…。ミシェルのアドリブには、どことなく巨匠ビル・エヴァンスを思わせるテクニックが感じられる。ペトルチアーニとペデルセンでなければ成し得なかっただろうデュオであり、まるで一つの小宇宙を創り出していくかのようなその過程は、まさにジャズの醍醐味と感じた。余談だが、冒頭でグラスに氷が落ちる音がマイクに収録されているのもライヴならではで雰囲気充分だ。
本アルバムは2001年にリリースされた3枚組で、それぞれソロ・デュオ・トリオが1枚ずつにまとまった未発表音源という、いずれもレアもの。幸いな事に、このデュオ音源は、その後2009年にボーナストラックも加わって2枚組で再発売されおり、現在でも手に入るが、当時、このディスクの購入に当たっては、既に最寄りのショップでは在庫切れで手に入らなかった為、唯一店頭在庫のあった恵比寿の新星堂に出向いて手に入れたのも、今となっては懐かしい思い出だ。自分の中では「いつか王子様が」の不動のマイベスト盤。

■ギター&ピアノデュオ
 トニー・ペトルチアーニ(ギター)
 ミシェル・ペトルチアーニ(ピアノ)
 (1992年10年録音、リヨンにて収録、DREYFUS JAZZ海外盤)


ミシェルの父、トニー・ペトルチアーニとのデュオによる1992年のライヴ録音。アルバム「Conversation」(ジャケット画像:下)に収録。こちらはトニーが主旋律、ミシェルは伴奏を担当。そもそもギターとピアノによるデュオが成立するかどうかと、最初は思っていたものの、それは本アルバムを聴けば一聴瞭然、ミシェルの絶妙な伴奏がギターを引き立てている。父のテクニックの高さも相当なものだが、中間部ではミシェルのアドリブも堪能できる。親子愛の感じる演奏はジャケットからも漂っており、心が温まる。