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もう気が付いたら晩秋・・・冬の気配が近づいてくる今日この頃だが、冬に入る前にこの曲を。秋といえば文化祭のシーズンでもあるが、秋の晴れ渡った休日に、思わず文化祭気分で聴きたくなったのがドヴォルザークの「謝肉祭」序曲だった。
ドヴォルザークというと、どうしても「新世界」や「スラヴ舞曲」の知名度が高いが、いやいや、この「謝肉祭」序曲も中身の詰まった名曲!冒頭からオーケストラが全合奏で血沸き肉躍るリズムで駆け巡る。その爽快感がまずたまらない。多彩なパレットを持ったオーケストラサウンドが味わえるのも魅力の一つ。実際、交響曲第8番と9番「新世界」の間に作曲されており、オケのパワーを最大限に引き出した曲といえる。コンサートのオープニングピースにも最適な曲だと思う。
今宵はそんな多彩な魅力をもつ曲を2種類の演奏で聴き比べてみた。

①アンドレ・プレヴィン指揮
 ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団(画像左)
 ('90年4月30日録音、U.C.L.Aロイスホールにて収録、TELARC輸入盤)


プレヴィンのロス・フィル就任後5年後となる録音。以前エントリーしたフィリップスへの初録音の印象そのままで、ロス・フィルのヴィルトォーゾな一面を堪能できる一枚だ。金管セクションも冒頭からパワー全開で、縦の線もびしっと整い、プレヴィンの指揮に見事に応えているのが伺える。ジュリーニ時代の功績も大きかったのだろう。ドイツ的な重厚さも持ちながらも、そこにプレヴィンならではの色付けができたハートフルなサウンドに仕上がっている。
録音日が一日のみとなっている所からすると、本番のコンサートを終え(もしくは控え)、そのまま勢いにのった中でのセッション録音だったのかもしれない。生のコンサートで聴けば充分感動できるレベルの演奏だ。

録音はテラークならではのワンポイント収録で、ダイナミックレンジに富んた優秀録音となっている。
カップリングは交響曲第9番「新世界」。フィリップス初録音アルバムといい、ラフマニノフの交響曲といい(こちらはロイヤル・フィルとの共演)、プレヴィンはスラヴ・ロシア系の曲がお好きなようだ(^^)

②ラファエル・クーベリック指揮 バイエルン放送交響楽団(画像右)
 ('76年2月録音、ヘラクレスザール、ミュンヘンにて収録、
 ドイツ・グラモフォン輸入盤)


ドヴォルザーク序曲5作品が収められたアルバムの中の一曲。冒頭からまるで「スラブ舞曲」の第1曲(プレスト)を思わせるかのような熱いリズムが炸裂!これぞ「謝肉祭」だ!と思わずうならせる野性味あふれた演奏に、ドヴォルザークの真髄をみたような気がする。
プレヴィン盤との優劣をつけるつもりはないが、クーベリック盤の後にプレヴィン盤を聴いてしまうと、外見が整った紳士的な演奏に聞こえてしまうから不思議だ。

既にクーベリックは'73~74年にかけてドヴォルザークのスラブ舞曲集を完成させている経緯からしても、ドヴォルザーク作品を完全に手中に収めている事が伺える。
クーベリックにとっても彼の故郷のチェコを思いながらの事だったのだろう。南ドイツのオケからこれだけチェコのボヘミアの香りと民族色を引きせる手腕は大したものだ。ドヴォルザークの交響曲全集はベルリン・フィルと完成させているが、個人的には後年のバイエルン放送響とのライヴ録音(オルフェオ)の方が気に入っている。

録音も70年代ながら臨場感に優れており、ドイツ・グラモフォンの良き時代を堪能する事ができる。