今宵も若手アーティスト期待の一枚を。エリザベス・ウェーバーはドイツのワイマールやベルリン、そしてロンドンのギルドホール音楽院で学んだ女流ヴァイオリニスト奏者。ソロ、室内楽を中心に活躍をしているようで、数々のコンクールでも受賞をしている実力派。
元々ウェーバーというヴァイオリニストの事は何も知らず、「Primavera」というレーベルの珍しさと選曲に惹かれて購入したのがきっかけだった。しかし一聴して彼女の演奏に一気に引き付けられてしまった(01年12月、02年4月録音、フライブルグにて収録、Primavera輸入盤)。
曲目は以下の通り。
①バッハ:ソナタ第1番ト短調 BWV1001
②ベートーベン:ヴァイオリンソナタ第9番「クロイツェル」イ長調作品47
③シマノフスキ:ヴァイオリンとピアノのための夜想曲とタランテラ 作品28
18世紀から20世紀まで2世紀の隔たりがある作品を取り上げるという選曲の妙に、ウェーバーのソリストとしての自信をのぞかせる。
①②は古典的な名曲だが、現代的で洗練された演奏。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタといえば、それまでは5番の「スプリング」を好んで聴いていたが、ウェーバーのスリリングな「クロイツェル」を聴いて改めてこの曲が好きになった。
一方、③は初めて聴いた曲だがエキゾチックな雰囲気の曲。ファリャの影響を受けたスペインの作風となっている。曲は2楽章構成で、1楽章は夜の静寂を、そして2楽章では一転してラヴェルの「スペイン狂詩曲」を思わせるような祭り的な華やかさが感じられ、ヴァイオリンの緩急両面の魅力が堪能できる隠れた名曲になっている。
ウェーバーの演奏はいずれの作品もソリストとして抜群の柔軟性と安定性を持っており、テクニカル面、芸術面とも高レベルな水準に達した名演だと思う。
どこかクールな中にも情熱を秘めたアーティストだ。他にアルバムが出ていたら是非聴いてみたい。