昨年6月の第2回定期公演のリサイタルや、本年1月のコンサートで深い感動を呼んでくれたピアノデュオ、「ドゥオール」(藤井隆史&白水芳枝)の第3回定期公演に行く(10月12日 東京文化会館小ホール)。
ピアノデュオで求められるのは何と言ってもピアニスト同士の呼吸感だろう。その点、ドゥオールは夫婦ならではの呼吸の良さが他のデュオにも増して光を放っており、旋律の一つ一つに細やかな息遣いが感じられる演奏だった。
また、今回嬉しかったのはロビーに、会場先行発売で、デビューCDが並んでいたこと!彼らのピアノデュオアルバムが発売されれば是非購入したい、と思っていただけに感激だった。
当夜のプログラムは以下の通り。
1. ブラームス:大学祝典序曲 op.80
2. レーガー: ベートーヴェンの主題による変奏曲とフーガ op.86
3. メシアン: アーメンの幻影
(1. 創造のアーメン、5. 天使、聖人、鳥の歌のアーメン)
4. ラヴェル: ラ・ヴァルス
「大学祝典序曲」はブラームス自身の編曲による4手連弾。連弾版を聴くのは初めてだったが、ブラームスのオケ作品の中でも好きな曲であっただけに、嬉しい選曲だった。曲の持つ華やかさが、演奏会のオープニングにも相応しい。
通常、コーダの部分はオケ版なら金管楽器が高らかに祝典の歌を歌いあげ、華やかに終わるだけだが、彼らの演奏は、華やかさだけにとどまらず、ブラームスの叙情的な一面も曲の中で表現していたのが印象的だった。昨年もやはりブラームス作品(「ハイドンの主題による変奏曲」)を演奏した時の感動が蘇る。
2曲目のレーガーの「ベートーヴェンの主題による変奏曲とフーガ」(2台ピアノ)は彼らのドイツ留学での経験が息づいた選曲でもあるのだろう、終曲かけてドラマティックな盛り上がり方は素晴らしく、実に息の合った、ピアニスティックな表現を聴かせてくれた。
休憩を挟み、後半の2曲はフランスもの。今年生誕100年となるメシアンの作品は、今年様々な演奏会で演奏されることが多いようだ。「アーメンの幻影」(2台ピアノ)では、やや照明を落とした演出もあり、メシアンの独特な世界の表現に成功していた。
メインの「ラ・ヴァルス」ではオケ版に劣らない色彩感とダイナミズムを2台のピアノで見事に表現。ドイツものからフランスものまで、2台のスタインウェイも素晴らしい音で応えていた。
アンコールはプーランクの小品に続き、ブラームスのハンガリー舞曲第5番が演奏された。ブラームスに始まり、ブラームスに終わる。これもまたまた良かった。
終演後のCD即売会では長い列が・・・。会場先行発売となったCDの収録曲は以下の通り。
1. ルトスワフスキ:パガニーニの主題による変奏曲(2台ピアノ)
2. ラヴェル:スペイン狂詩曲(1台4手)
3. シューベルト:幻想曲ヘ短調 D.940(1台4手)
4. ラヴェル:ラ・ヴァルス(2台ピアノ)
ピアノデュオ ドゥオール Deu'or(藤井隆史&白水芳枝)
(2008年8月11・12日録音、びわ湖ホールにて収録、Studio N.A.T国内盤)
過去の演奏会で聴かせてくれた名演がついにディスクでも聴けるようになった、マイベストCD!特にルトスワフスキの「パガニーニの主題による変奏曲」は、彼らの演奏で初めてこの曲を聴いた時に、その曲がもつダイナミズムに圧倒された曲。同曲が収録された音源の中でも最高峰に位置する演奏だと思う。
録音も素晴らしい。ホールの残響を程よく取り込んでいるため、聴き疲れせず、オーディオ上でも通常のコンサートと同じような音場感が味わえるのが嬉しい。
これからも、ピアノデュオの魅力を伝えてくれるドゥオールの活躍を応援していきたい。