今宵も最近発売されたディスクから。オランダの名門、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のブラスセクション(以下「RCOブラス」と表記)のサウンドを堪能できる一枚で、自主レーベルのRCOLIVE('06年11・12月録音、コンセルトへボウ・アムステルダムにて収録)からのリリース。最近はロンドン響(LSO)やロンドン・フィル(LPO)等、自主レーベルが盛んだ。
RCOブラスのようにオケの活動とは別個にブラス・セクションによる録音を残している団体には、ロンドン響の「ロンドン・シンフォニー・ブラス」やベルリン・フィルの「ベルリン・フィルハーモニック・ブラス」、ウィーン・フィルの「ウィーン・トランペット・コアー」、チェコ・フィルの「チェコ・ブラス・アンサンブル」(一部プラハ放送響)等がある。
RCOブラスはジャケット(下の画像)を見る限り、トランペット×4、ホルン×4、トロンボーン×3、ユーフォニウム×1、チューバ×1の13名が基本編成のようだ。メンバーの中にはトランペットの首席、フリッツ・ダムロウやピーター・マセウスも含まれている。
RCOブラスのサウンドを聴いた第一印象は、アンサンブル精度の高さと音色の見事な統一感。アンサンブル精度に関してはロンドン・シンフォニー・ブラスに次ぐと思う程の完成度だ。
また、音色面においてはあるパートだけが突出する事なく、楽器間のバランスとブレンド感が実に美しい。これが通常はオケの中で弦や木管ともブレンドし合うわけで、改めてRCOのオケ・トーンにも惹かれてしまう。
収録曲は以下の通り。
①ウィレム・ヴァン・オッテルロー:セレナード
②ニック・ウート:ザ・コール
③ジョヴァンニ・ガブリエリ:
第12旋法による10声のカンツォーナ~サクラ・シンフォニア集第11番C.180
④ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ:ラグタイム&ハバネラ
⑤ウィリアム・シュミット:ソロ・カデンツァを伴う変奏曲~トランペット四重奏のための
⑥デレク・ブルジョワ:コンチェルト・グロッソOp.61
③を除いて全て20世紀の現代曲の作品。RCOブラスのレパートリー開拓への積極的さが伺える。もちろん、ガブリエリのようなブラス・アンサンブルの古典的レパートリーが収録されているのも有難い。過去の名ブラス・アンサンブルのほとんどが取り上げている意味でもテストピース的存在の曲であり、その演奏法にも時代の変遷と進化を感じさせる。
個人的にはファンファーレ的な華やかな雰囲気を持った①、タイトルからもイメージが伺える④、後半の盛り上がりの展開に一気に引き込まれてしまった⑥が非常に良かった。
録音会場がもちろんコンセルトヘボウなのはまさにRCOならではの特権といえるだろう。
音響がデッドな事で悪名高き(?)バービカン・センターをLSOの本拠地とするロンドン・シンフォニー・ブラスにとってみれば羨ましい限りだ。彼らはここでガブリエリの作品集を収録しているが(Collinsレーベル)、後年、豊かな残響を伴う教会を使ってナクソスレーベルで再録音(ここでは「ロンドン・シンフォニー・オーケストラ・ブラス」と表記)しているのもなぜか納得がいく(^^;
RCOブラスの今後の活動に注目していきたい。