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自分は映画音楽が好きだ。映画はもちろん好きなのだが、映画音楽がオーケストラサウンドだったりすると、目より耳が集中してしまう時もある。オーケストラサウンドに魅力を感じる何かがあるからだと思う。中でもジョン・ウィリアムズの展開するサウンドは小学校時代にスター・ウォーズの音楽に親しんで以来のお気に入り。
そんな中、‘ジャケ買い’ならぬ‘一曲買い’をしてしまったといっても過言ではないアルバムがある。
それは通称“ダース・ベイダーのテーマ”でお馴染み、『スター・ウォーズ帝国の逆襲』の「インペリアル・マーチ」。レナード・スラットキン指揮 セントルイス交響楽団の『クラシック・マーチズ』アルバム(1984~1987年録音 パウエル・シンフォニーホール、セントルイスにて収録。RCA国内盤)に収められている一曲だ。

この曲はセントルイス響が1990年代前後に来日した際、公演のアンコールでの折にモートン・グールドの「パヴァーヌ」と共に演奏された。NHKで放映されたライヴ映像を見て、当時学生だった自分は胸が高鳴ったのを覚えている。アメリカの一流オケがサントリーホールで高らかに鳴り響かせた“ダース・ベイダーのテーマ”。映画音楽がクラシック音楽と同じ土俵で堂々と演奏されている事に、アメリカを代表する作品である事の誇りを彼らから感じたものだ。
今でも実家に当時録画したVTRが大切に保管されているのだが、実にお国ものらしくてよい。
アメリカのオケが演奏する“ダースベイダーのテーマ”は、例えていうなれば日本のオケがヨーロッパ公演したらよくアンコールで演奏される「八木節」や「管弦楽の為のラプソディ」みたいなものだろうか(^^)

ここでの録音も、当時の公演を彷彿とさせる演奏。ストリングスと共に歯切れのいいリズムを刻むスネア・ドラム。トランペットとトロンボーンのソリによるダース・ベイダーの旋律。暗黒の悪役のテーマのはずなのに、聴いていて、実に爽快なのだ。この曲がマーチとしても名曲である事を改めて感じさせてくれた。

このアルバムには自分にとってクラシックの世界に開眼させてくれたユージン・オーマンディ&フィラデルフィア管弦楽団コンビによるマーチアルバムで演奏されていた曲もたくさん含まれている(マイヤベーアの「戴冠式行進曲」やグノーの「操り人形の葬送行進曲など)。時代は変わっても名曲は不変であると感じると共に、ユージン・オーマンディへのオマージュ的な要素もこのアルバムからはどことなく感じるのだ。
また、ガンツの「セントルイス交響楽団行進曲」という楽団のオリジナル曲が収められており、これがまた魅力たっぷりで実に楽しい。

録音当時まだ40代前半のスラットキン。当時、ルロイ・アンダーソンや、アンコール集といった他の名曲アルバムもRCAに数枚残しており、クラシックファンづくりでクラシックの世界の裾野を広げた彼の功績も大きいと感じた。