昨日のチック・コリアに触発(?)されて、今宵はフリードリヒ・グルダとの思い出の一枚を。ジャケット帯に「異色の顔合わせ」とある通り、フリードリヒ・グルダとチック・コリアというクラシック&ジャズのピアニストが古楽系出身の指揮者ニコラウス・アーノンクールとオランダの誇る王立アムステルダム・コンセルトへボウ管が共演するという、グルダが故人となった今では貴重な録音('83年頃録音、コンセルトへボウ大ホールにて収録、TELDEC輸入盤)だ。
3曲が収録されており、そのいずれもが2台ピアノのための曲。
1曲目のモーツァルトの「2台のピアノのための協奏曲」は全体に早めのテンポで進められており、爽快。コンセルトヘボウ大ホールの豊かな音響もプラスに作用しているのか、聴いていて実に気持ちいい。ジャズの奏法も期待していたが、意外にも?正攻法なアプローチ。熱きジャズ魂の2人がモーツァルトを弾く喜びにあふれている気がする。アーノンクール&アムステルダム・コンセルトヘボウ管がそんな彼らの演奏をやさしく包みこんでくれている。
一方、昨年NHKでも放映された宮崎の国際音楽祭での小曽根 真のモーツァルトのピアコンのカデンツァは完全に小曽根独自のインプロヴィゼーションを展開。まさしくジャズ・ピアニストが弾くモーツァルトになっていた。
どちらが良い、悪いの問題ではない。あくまでアプローチの違いであり、そのどちらにも個性が感じられる。
本領発揮はこの後に収められた2曲。ジャズ対決!とでもいえるような2曲が収められている。グルダとコリアそれぞれのオリジナル・ピアノデュオ作品だ。
個人的にはコリアのオリジナル曲「2台のピアノのための幻想曲」が素晴らしい。単にジャズ、とひとくくりには出来ない深遠さが感じられる曲だ。
一方、グルダの「ピンポン~2台のピアノのための」は響板の弦をはじくプリペアード奏法も取り入れたりして、まさに弾きたい放題!という感じ。グルダの狙いはモーツァルトよりもしかして自作の曲にあったのでは?とさえ思ってしまう(^^;
ともあれ、ここでのグルダとの出会いが後のコリアの自作のピアノ協奏曲への創作に結び付くきっかけとなった。人間、出会いというのは大切にしたいものだ。