英国ブラス団体の中でも最高峰に位置する2大バンド、ブラック・ダイク・バンドとロイヤル・マリーンズ・バンドアルバム「キャピトル・ブラス」を聴く。2004年の全英ブラスバンド選手権におけるガラ・コンサートの模様を収めたライブアルバムで、それぞれの個別演奏に加え、2大バンドによる合同演奏も収録されているのが最大の聴き所。録音ははや5年が経過しているが、2大バンドの近況を知る意味でも貴重なアルバム。会場はあのロイヤル・アルバート・ホール。聴衆の興奮ぶりがリアルで伝わってくるのも嬉しい。
収録曲は以下の通り。
1. サモン・ザ・ドラゴン(ピーター・グレイアム)●
2. マスク(ケネス・ヘスケス)●
3. ハリー・ジェームスに捧ぐ(エリック・コーツ&アルベルト、arr.岩井直溥)
4. 映画音楽メドレー★
・「ミッション・インポッシブル」より(ラロ・シフリン、arr.アラン・ファーニー)
・映画「オースティン・パワーズ」よりソウル・ボサ・ノヴァ(クインシー・ジョーンズ、arr.アンドルー・ダンカン)
・「天使にラブ・ソングを」よりアイ・ウィル・フォロー・ヒム(arr.ゴフ・リチャーズ)
5. 蛍の光(シモン・マンティア、arr.ミーチャン)★
6. ...all the flowers of the mountain...(マイケル・ボール)★
7. ウィンドウズ・オブ・ザ・ワールド(ピーター・グレイアム)★●
・アマゾニア
・レインフォレスト
・ドラムス・オブ・サンダー
・ケルティック・ドリーム
・アース・ウォーク
8. ゲールフォース(ピーター・グレイアム)★●
・The Rocky Road to Dubin
・Minstral Boy
・Tossing of the Feathers
●印:=ロイヤル・マリーンズ・バンド(指揮:クリス・デイヴィス中佐)
★印:ブラック・ダイク・バンド(指揮:ニコラス・チャイルズ)
★●印=マスバンド(ブラック・ダイク・バンド&ロイヤル・マリーンズ・バンド)
(2004年10月16日録音、ロイヤル・アルバート・ホールにて収録、DOYEN輸入盤)
プログラムはロイヤル・マリーンズ・バンドのステージからスタート。「サモン・ザ・ドラゴン」の冒頭はさながらコープランドの「市民の為のファンファーレ」を彷彿とさせ、トランペットが勇壮なテーマを奏でる。全体的なスケールの大きさが実に英国風で、本アルバムの中でもお気に入りとなった曲の一つ。
「ハリー・ジェームスに捧ぐ」では、1993年までブラック・ダイク・バンドのプリンシパル・コルネットを務めたロジャー・ウェブスターがソロを奏でる。思う存分、コルネットの甘い音色を堪能できるのが聴き所。アレンジには岩井直溥氏の名前が・・・さすが世界の岩井氏!
対して、ブラック・ダイク・バンドのステージでは、「映画音楽メドレー」からスタート。ガラ・コンサートという場を意識した選曲意図もあるのだろう、メドレーの一曲目、「ミッション・インポッシブル」から一気にヒート・アップ。小気味よいリズムを聴かせるメドレー二曲目の「ソウル・ボサ・ノヴァ」に続き、ラストの「天使にラブ・ソングを」では、ゴスペル調の感動的な調べを聴かせてメドレーを締めくくる。ロンドンっ子にも馴染みがあるメロディー。会場を沸かせる卓越した演奏力。アレンジも含めて何とも素晴らしい!過去、ブラック・ダイク・バンドのアルバムでは、ポピュラー路線の収録曲はあまり聴いていなかっただけに、自分の中でも好感度が一気にアップした。ちなみに、ジャケット(画像:下)を見ると、プリンシパルの位置にロジャー・ウェブスターがいるのを確認!
合同演奏は2曲を披露。英国のウィンドバンドとブラスバンドによる両巨頭の合同演奏だけに、白熱した演奏シーンが頭に浮かぶ。「ゲールフォース」は「リバーダンス」を思わせるケルト風のテンポ感ある曲。クライマックスで会場に轟くスネアのサウンドに、聴衆も熱狂したに違いない。
なお、本アルバムで3曲収録されている作品の作曲者、ピーター・グレイアムは、フィリップ・スパークに続くブラス界のヒット・メーカーとしての活躍が期待される。今後も続々と生み出されるであろうブラス作品も要チェックとなりそうだ。